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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨12¨-2

「はいはい、はいはい。空気を読みましょうね弥生ちゃん」

すると速人が、あやす様にぽんと織田さんの頬を叩いた。
彼女は驚いて言い返そうとしたが、更にもう2回叩かれて発言のタイミングを挫かれる。

「最初はのんびりいこうぜ。あのバスで一周してさ、それからいこうぜ」
「はぁーい・・・」
「そんな顔してたらブスになるぜ、笑顔笑顔!」

織田さんだってたまには我が儘言うし、速人もフォローしたりするんだな。
時間は人を変化させるし、また成長させたりするんだ。

「賢司くんどうしたの」
「悪い、財布車に置いてきちまった。ちょっと取ってくる」
「はい、お財布。運転席の下に落ちてたよ」
「え・・・わ、悪いな。ありがとう杏子」
「私もたまにはしっかりしてるでしょ。賢司くん、全然気付いてなかったみたいだよ」

妙に落ち着きがないと思ったら、賢司らしくないミスだな。
あと、良い意味でらしくないのが葉川さんだった。
たまには賢司だってうっかりするし、葉川さんも気付いたりするんだな。

・・・何だか落ち着かない。
せっかく集まって遊んでるのに、前とどこか違ってる様な気がしてならない。

「成敏」
「・・・・・・」
「ねえ成敏。なーるーとーしっ、ねえってば」
「あっごめん、なに遥?」

後ろから肩を叩かれて振り向くと、僕の頬に尖ったものがめり込んだ。
遥の人差し指だ。あんまり爪を伸ばしてないから痛くは無い。

「引っ掛かったぁー。これで私の・・・何連勝だっけ」
「知らない、数えてないもん」

こんな幼稚な悪戯を無邪気にやる遥は、変わってない。
大人しそうに見えて意外と悪戯好きだと分かったのは、付き合う様になってからだ。
遥が言うには僕の反応が面白いのが理由らしいけど、自分の事は自分じゃ分からない。

普通だ普通だと言われ続けてきた僕にとって、それ以外の印象というのは新鮮だった。

「痛っ!おい速人、やめろ」
「ノロノロ走ってんじゃねーよ賢司。速い人には道を譲るんだよ!」

速人のゴーカートが後ろから賢司のを追突している。
賢司はさっきの運転は別に問題無かったのに、ここではあんまりスピードを出していない。

「賢司くん覚悟しなさーい、当たるぞ〜」
「ばっ馬鹿、やめろ杏子。前から・・・うおっ!」

さらに前方から葉川さんに迫られ、挟み撃ちにされてしまった。
こういう遊び方は良くないと思いながら、僕は可笑しくて笑いが止まらない。
普通に競走すればいいのに悪ふざけになっちゃうんだよな。
最近じゃ葉川さんまで賢司にちょっかい出す様になったし、その内遥までやりだしそうでちょっと怖い。

でも、やり返すのは速人に対してだけだから、安心出来るかな。


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