投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

月夜と狼
【幼馴染 恋愛小説】

月夜と狼の最初へ 月夜と狼 8 月夜と狼 10 月夜と狼の最後へ

月夜と狼-9

翌日。

起きたら、俺は素っ裸で布団に潜ってた。
あ、人間になってら。

学校は休んだ。
誰もいないような早朝に学校に行きはした。
カバンと昨日脱ぎ捨てた制服を取りに。
服はトイレの床でもがきまくったせいでボタン取れてるわ、擦れてるわ、汚れてるわで、そのまま着られるシロモノじゃなかった。

家に帰ってまた爆睡。
夕べだって俺にしては早い時間から寝てたんだけど。
(ほら、なんにもできねー、不慣れな身体だったし?)

昼過ぎに起き出して飯食って。

母さんにいろいろ聞きたいこともあったし。

「大したことじゃないわよ。ま、いろいろ制約があるかもしれないけど、人間、化けなくったってなにかしら制約はあるわよ。仕事とか病気とか。んー。そうね、月1で親公認の休日が出来たと思えば?満月の月の出だけ気にしてればいいの。速攻で帰ってくるなら学校を休まなくったっていいの。時期によるけどね」

俺は憮然としたまま、母さんの話を聞いてた。

「あー!もー!わけわかんねえー!」

百聞は一見に如かず。
身をもって体験済み。
話は理解した。
理解はしたけど、納得がいかねえ。
気持ち的に。腑に落ちねえ。

「悩め、悩め。青少年」

母さんがクスクス笑ってお湯を沸かしはじめた。

「母さんは、こういう体質だってのが分かった時どう思った?」
「私?私はね、これ自体はすぐ慣れちゃったの。家族は別に前と変わらなかったし。
ひいじいちゃんがそういう体質だったってのは、なにかにつけ聞いてたしね。こうなる前までは作り話だと思ってたけど」

ぱたぱたとスリッパの音を立てながらこちらに来ると俺の額をちょんとつついた。

「父さんも母さんも浩太が好きよ。それは変わらないんだからね。昨日父さんも言ってたけど」
「やめろよ…。気持ち悪い」
「今だから、ちゃんとはっきり言っておくのよ。結構効くのよ、この薬。のちのちね。さすがに大きすぎて攻撃してくるヤツはあまりいないけど、怖がられて死にものぐるいで逃げられたら、やっぱり凹むわよ。でも、家族だけは大丈夫。絶対にね。そう思えたら図太くもなれる。ふふふ」

母さんは同類だからか、当然のように変わらないんだけど。
確かに父さんが俺にビビッて狼狽えてるって気はしない。
でもなあ、アレも慣れからくるものかな。嫁がアレだし。

「ねえ。なんで、結婚しようって思ったの?父さん知ってたの?」
「拓海さんがプロポーズしてきたのよ、勿論。んー、狼に化けちゃうのは結婚する前には知ってたし」
「…モノ好き」
「ちょっと?聞こえてるわよ」

「飲むでしょ。ほれ」

母さんが俺のマグにコーヒーを入れて持ってきた。

「ん」

俺はマグを受け取ると湯気を立てるコーヒーを見つめた。


月夜と狼の最初へ 月夜と狼 8 月夜と狼 10 月夜と狼の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前