雨の半休日-3
「ふ…ぁっくしょ…ん!」
ぶるっ、脱衣所が寒い!
でも、お風呂場の中の人間に気付かれないように、声を抑えた。
どうしよう…もう、出るかな?
一回部屋に行って服を着る?
バスタオル巻いて、居間で待つ?
うぁ…歯が…がちがち、鳴ってきた。
ぶるる…やば、また、くしゃみ出そ…!
「っく、ふぁ…ふぁ…
…ふ、わぁっく、しょぉん!!」
我慢しすぎ、前代未聞の、デカイくしゃみ。
「亜希子?…お!?」
ほうら、気付かれた…
「…エ、えへ?」
なぜか、照れ笑いが出てきた。
なんか、この状態がマヌケな気がして。
おっきなくしゃみも恥ずかしかったし。
「お前、笑ってんなよ、カゼ引くぞ?
んな、色気の無ぇくしゃみして」
冷静にアニキが切り返してきたので、あたしは心底ホッとした。
だって…
3か月前に、アニキとえっち、しちゃってから…
あたしは、極力、いや、総力をあげて、アニキを避け続けてきた。
会話もほとんどせず、目を合わせるのも久しぶり。
…恐かったから。
アニキと、っていう事実もそうだけど、一番は、流されてしまった自分。
両親の前では顔に出さないように。
またそんな状況に陥らないように。
がんばってきたのに、今ここで、アブナイ状況になってしまっている。
だから、アニキが冷静に話しかけてきてくれたので、本当にホッとした。
「あ、うん、今にもカゼ引きそう。
もう、お風呂出る?」
「いや、今入り始めたばっかりなんだけど…。」
「げ…」
「なに、お前、この雨ん中、1人で歩いてきたの?傘無しで?」
「うん…って!あのさ、早くお風呂場に戻ってくんない!?」
…だって!
見えるんだもん、ドアのすりガラス越しに、アニキのカラダが!
覗かせてるのは、顔だけだけどさ。