シグナル¨9¨-1
期末も終わり、補講期間になった。この後は冬休みで、そして数日したら今年も終わる。
火曜日の夜、弥生と杏子がアパートに来た。明日は予定も無いしたまには、って事で久々に泊まりに来た。
「うっわマジでこんなの着させてんの?あははは、あんた何気に結構Sっぽいよね」
弥生が杏子の携帯の待ち受けを見て、お腹を抱えている。
私もつられて可笑しくなったけど、一体どこでこんなのを買ってるのか気になった。
「頼めば大抵はやってくれるよ。一緒にお揃いのを買いに行って、夜になったらお互いに着てメールしようって約束してるの」
杏子の今の待ち受けは、大きな体を熊の着ぐるみに包んだ賢司くんだ。
怖い顔の人がこんなににやける程、杏子とラブラブらしい。
普段も全然喧嘩どころか言い合いもしないし、見てると普通にいい雰囲気だ。
「弥生はどうなのー。速人くんとラブラブなんでしょー」
「全然。またいつもの調子だよ。遊園地じゃカッコ良かったくせにさー・・・」
「弥生はオレが守ってやる、一生!だっけー」
「それはカッコ良すぎ。でも、近いかな。うふふふ、ふふ・・・ふふふ」
普段は全く褒めないけど、速人くんの話をしてる時の弥生は・・・とにかく、嬉しそうだ。
弥生が褒めるくらい、告白した時の速人くんはカッコ良かったらしい。
私のイメージだとどうしても想像出来ないけど、軽い調子でも決める時は決めるんだね。
・・・きっと、私にも杏子にも見せない様な顔を、弥生だけに見せたのかな。
「あたしの事、もっと知りたいって。あんなに真剣に言われたの初めてだったから、ちょっと泣きそうになっちゃった」
「キュン!てした?」
「・・・・・・・・・」
こくん、と頷く弥生はまるで酔っ払ったみたいに真っ赤になっていた。
すっかり恋しちゃって、普段は男らしい弥生が女の子らしくなってる。
「違う違う違う違う、違うから。飲み過ぎただけ」
「オレンジジュースで酔っ払ったのー?」
「キュンてしたんでしょ、速人くんの告白で」
「うっさい!杏子も遥もやめてよ!っていうか、遥はどうなの。成敏とさあ」
聞かれるだろうと思ってたけど遂にきたか。
でも、私にだって2人に負けないくらい思い出があるんだから。余裕で披露出来るよ。
「こないだ学祭で一緒に遊んだよ。すっごい楽しかった」
「それ、知ってるよ。あたし達もいたし。他には?」
「・・・あとは、んと・・・無い、かな」
「えー、あるでしょ。一緒に買い物行ったりしないの」
杏子に言われて、今まで成敏くんと2人だけで遊んだ事がないのに気付く。
これって・・・もしかしてかなりやばくない?
もう弥生も杏子もとっくに付き合ってるのに私だけ置いてかれてる。
「したことない、かも」
「マジで?遊びたいって思わないの?」
「それは・・・思うよ。でも、なかなか時間合わないし」
「あたしもそうだけど、よく帰りに遊んだりするよ。向こうから来るのが多いけど」
「私も賢司くんから誘ってくる事が多いかなー」
「そ・・・そう・・・」
冗談抜きでこないだの学祭が初めてだったかもしれない。
べ、別に恥ずかしいとかそういうんじゃないんだけど・・・