シグナル¨9¨-5
「綺麗でしょ、これ」
「・・・うん・・・」
着いた先は駅前の広場にある、おっきなツリー。
白と青、見渡す限り2色の光を着飾って誇らしげに、でも静かに佇んでいた。
私とは違ってしっかり地面に根付いた立派なツリーだ。
「初めてこれを見た時、妹尾さんと一緒にって決めたんだ」
「いつ・・・知ったの?」
「一昨日」
随分最近じゃない。
じゃあ、もうほぼ思い立ったって感じだったんだ・・・
もしかして・・・成敏くん、まさか・・・
¨ドクン・・・¨
「妹尾さん。聞いてほしい」
「ん、うん」
この時を待っていた。
成敏くんは今、精一杯勇気を振り絞ってるに違いない。
私の約束、覚えててくれたんだね。
夏休み、みんなで行ったプールの帰り・・・
いつか勇気を見せてってメールした。
約束っていうのかな?一方通行っていった方が合ってるかも・・・
手を繋いだまま、成敏くんは私に笑いかけた。
とっても穏やかで落ち着いた表情だった。
「僕の彼女に、なってほしいんだ」
ずっと待っていた言葉を聞けた。
言ったあともまったくその表情は変わらなかった。
「・・・うん・・・」
嬉しくって、胸がいっぱいで、喉が詰まっちゃってすごく小さい声しか出なかった。
でも、きっと聞こえたよね。私の想い・・・届いたよね。
「これからはさ、妹尾さんじゃなくって・・・遥って呼んでもいい?」
「じゃあ私も、成敏って呼ぶね。えへっ」
空がお祝いしてくれてるのか、雪が降ってきた。
イルミネーションに照らされてとっても綺麗で・・・
「お腹空いたね、成敏。なんか食べよっか」
「う、うん・・・」
でも、成敏・・・は動かない。
早速ふざけてるんだと思ったけど、膝が痙攣してる。
「ごめん、足が固まっちゃった。だって・・・ずっと緊張しっぱなしだったから・・・」
「私もだよー。あははは、成敏ってば・・・あは、ははははっ、あははは」
動けなくなっちゃったんだ。
そうだよね、ちょっとカッコ良すぎたから。
いっか、そんな急いでどこかに行かなくても。
初めて会ってからもう何ヶ月経ったかな。
まさか、一番最初に話した時は恋人になるなんて思わなかった。
ずっと想い続けてきたけど・・・こうして一緒になれたんだね。