投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

シグナル
【青春 恋愛小説】

シグナルの最初へ シグナル 47 シグナル 49 シグナルの最後へ

シグナル¨9¨-4

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

待ち合わせ場所は、正面玄関。
外はもうすっかり日が暮れて向かいに立ち並ぶ木はイルミネーションに彩られ、光の飾りが美しく映えていた。

道行く人はカップルばかりで、皆幸せそうに笑っている。

・・・もうすぐ私もその沢山の中に加わるのかと思うと、たまらなく幸せな気分だった。
でも、気が早いかな。成敏くん、やっぱり何も言えないかもしれないし。
でも、そういう私も偉そうな事は言えないかも。

「お待たせ、妹尾さん」

呼ばれて振り返ると、成敏くんが傍に立っていた。
全身黄色尽くしで暗闇でも目立つ。
一方私は・・・黒ずくめで見事に溶け込んでいた。
どんな格好で来ようか迷いまくったけど、結局自分の好きな色に決めた。
だけど、もうちょっとお洒落すれば良かったかなー。でも黒しか持ってないし・・・

「待った?」
「ちょっと前来たとこだから」
「そ、そう、良かった。じゃあ・・・行こうか」
「どこに行くの?」
「秘密・・・かな」

成敏くんはそれだけ言うと足早に歩き始めた。気になったけど、行ってみれば分かるか。
すれ違うカップル達はさっき見てたのと変わらず、皆幸せそうだった。
でも私は、成敏くんの横に並んで歩いてるだけ。
あそこの木の下にいる女の子みたいに、彼氏の腕に手を絡めたり出来ないよ。
それどころか、手を握る事すら出来てない。

こんな時、弥生なら自然にやれちゃうんだろうな・・・
杏子だったら、賢司くんに甘えられちゃうんだろうな、きっと。

大学生になったらもっと大人の恋をするんだと思ってた。
簡単に階段を上がる事は出来ないみたいだね。
でも・・・もどかしいけど、嬉しかった。

私の顔すら見られない成敏くんが、精一杯の勇気を振り絞って誘ってくれたから。

足はちゃんと地面に着いてるのかな?
踏む音や感触はするんだけど、今の感覚はそれを現実のものと認識できてないみたいだった。
これじゃ、どっちみち喋りたくても無理っぽいかな。


「もうすぐ、だよ」
「・・・あっ」
「行こう!すぐ着くから!」


手、手を、握られてる。
成敏くんの方から・・・えっ?これ、本当なの?
私の左手が、成敏くんの右手に包まれてる・・・
白くて女の子みたいな手だって思ってたけど、ちゃんとした男の子だった。

強すぎて、ちょっと痛いから。

吐き出す度に白い息が暗闇に溶けていく。

とっても安心する・・・
あの時と同じだ、学祭のお化け屋敷で、ホントはすっごい怖かった。
成敏くんには気付かれなかったけど、怖くて一秒でも早くあそこを出たかったんだ。

いきなり握ってたから変に思われたかも・・・
成敏くんには私がどんなふうに見えてたかな。全く怖がってない様に見えてたのかも。

でも今は、もうずっとドキドキしっぱなしでおかしくなっちゃいそうだよ・・・



シグナルの最初へ シグナル 47 シグナル 49 シグナルの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前