シグナル¨9¨-3
そして、クリスマスはやってきた。
私はジャージで布団に包まりながら、これから何時間寝ようか考えていた。
たった今起きたばっかりだけどもう眠たい。
・・・別に自分を嘆いてる訳でも、成敏くんの事を責めてる訳でも無かった。
寝正月じゃなくて寝クリスマスなんてのもたまにはいいと思うし・・・
意識が沈みかけたその時、枕元から何かの振動音がした。
ああ、電話か。誰からだろう。
きっと弥生か杏子からかもしれない。やめとこう、出ない方がいい・・・
出たら惚気を延々と聞かされるだけだろうし、そしたら眠れなくなっちゃう。
「・・・まだ鳴ってる・・・しつこいなぁ・・・」
すぐ切れると思ったのになかなか諦めてくれない。
仕方ないな、ちょっとだけ話してあげよう。
私は何気なく電話を開いてそのまま出た。
「はいもしもし・・・」
寝呆けて開かない口をなんとか開けて、その隙間からだらしない声が出た。
眠気が明らかに隠せていない、みっともない声だ。
でも別にいい、どうせ相手は弥生か杏子しか・・・
『妹尾さん?』
誰だろう?女の子にしてはやけに低い声だ。
でも賢司くんでも速人くんでも無さそうな・・・
「成敏くん?!どうしたのこんな時間に?!」
相手が分かった瞬間思わず飛び起きていた。
『あ、あの・・・うん、ちょっと・・・今日、時間ある?』
「ある!あるある!」
『じゃ、じゃあさっ、5時に学校に来てほしいんだ。大丈夫?』
「うん!行く、必ず行くから!!」
『それじゃあ・・・また後でね』
成敏くん、声が上ずってた。
人のことは言えないか。私もめっちゃ焦ってたし。
急いでジャージを脱ぎ捨てて着ていく服を探した。
腑抜けてる場合じゃない、成敏くんに誘われたんだ。早く目を覚まさなくちゃ。
成敏くんに申し訳無いと思った。
クリスマスに向こうから呼び出すなんて思ってなかった事が情けなかった。