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ホテルノヒカリ
【OL/お姉さん 官能小説】

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ホテルノヒカリラスト-1

日本の方や外国の方でゴッタ返す成田空港の出発着ロビー。
飛行機の到着や何やらを告げるアナウンスの喧騒。
それらはどうでもよかった。
ちょっと淋しそうに笑う士郎さんが私の前に立っている。
このバカでっかい空港の中で私の目に入るのは士郎さんだけ。
「美沙さん…行ってくるね」
そして耳から入ってくるのは士郎さんの声だけ。
「士郎さぁん…げ…元気で帰ってきてね」
泣くな!私!笑え!笑って見送れ!
自分自身を叱咤しまくっても…。
ダメだぁぁ…涙が出そう。
私は上を向いて目をパチパチ。
でも無理!
涙が出てきたぁ!
ってか涙が出たら鼻水も出てくるよね…これは自然の摂理だから仕方ないけど。
でも…一回泣き出したら止まんないよぉ。
私は人目も憚らずピィーピィー泣き出してしまった。
鼻水もズルズルで涙もボロボロ。
とても人前に出せる顔じゃないけど…。
けど…。
けど…。
士郎さんが大好きなんだよぉ。
そんな私を士郎さんが…士郎さんがガバッて抱きしめてくれた。
「うぇ〜ん…ぇ〜ん…ひっく…じろぅざぁ〜ん…うぇ〜ん」
ダメだボロボロで言葉にならないや。
「美沙さん…俺…帰ってきたら美沙さんを…美沙さんを…」
私を抱きしめる士郎さん。
耳元で優しく囁いてくれてる。
「ひん…ひっく…うん…うん…うぇ〜ん」
私は泣きながら何度も頷いた。
何度も…。
何度も…。

季節は過ぎた。
温かスープやパンツ泥棒ニャンコの事は随分昔みたい。
私は仕事もバリバリ頑張ったよ。
家も綺麗な感じだし。
あの貼り紙は士郎さんが行く前に抱いてもらったからクリアって事で。
士郎さんと電話で話した夜なんかはムラムラしちゃって自分でしちゃったりしてるけど。
でもとにかく…色んな事に頑張って士郎さんの帰りを待ったの。

そして秋も深まった頃…。
「ゴローごはんだよ」
私が今ではすっかり飼い猫になったニャンコに餌をあげてる時だった。
ピロリロ♪ピロリロ♪ピロリロ♪ピロリロ♪
お!携帯に着信!士郎さんかなぁ?
士郎さんだぁ!!
「はい♪はぁい♪」
私はご機嫌で携帯に出た。
「み…美沙さん…ゴメン…俺撃たれ…ちゃった」
「えぇぇ!!」
携帯から流れる士郎さんの苦しそうな声。
私は目の前が真っ暗になった。
「ゴメン…今から…しゅ…手術…」
「士郎さん!士郎さん!」
「プゥ………」
どうしよう…どうしよう!どうしょう!!
私はパニックになっていた。
涙がボロボロ流れて止まんない。
士郎さん!士郎さんにもしもの事があったら!
私は着の身着のまま家を飛び出していた。

“士郎さんが無事でいますように”
私は生まれて初めて真剣に祈っていた。
近くの神社だけど…今の私にはこんな事しか出来ない。
こんな事しか出来ないけど…。
神様助けて!お願いだから…士郎さんを助けて!!
祈り続けて夜も更けてきた。
かまうもんか!
士郎さんの無事な声を聞くまでは祈り続けてやる!
だから…だから…神さまぁ…お願いだよぉ。
その夜…私は涙に限度がある事を始めて知った。


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