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冬の日の出来事。
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その後の出来事。-6

朋久?
朋久だ。
朋久の名前が出てる。
あいつあんな事の後に何しれっと電話なんかしてくれてんの。

出られるわけないじゃんか。

携帯をギュッと握りしめて、それからベッドのマットレスの下に押し込んだ。
微かに聞こえていたメロディーは数十秒間鳴り続けた後沈黙する。その後それを数回繰り返すと、気が済んだとでも言うように一切の音を出さなくなった。

恐る恐るマットレスの下から携帯を救出して中身を確認。
うわ、着信8件…
意外としつこい――…

「…ん?」

部屋の外から家の電話のコール音が聞こえた。
いや、まさか今時家に電話とかないでしょ。
まさかね。
階下からお母さんの明るい声がする。足音が階段に近づいてる。でもまさか――…

「つぼみー、トモ君から電話ー」
「マジか」

あいつ、何考えてんだ!
そんなにあたしに恥かかせたいのか!?
わざわざ家にかけなくてもいいじゃん!

「つぼみー?」
「いないって言って」
「いるって言っちゃったわよ」
「何で!?」
「いるからよ」
「…っ」

言い返す余地無し。
そりゃいたらいるって答えるわな。

重い腰を上げて、それ以上に重い足取りで、ゆっくりゆっくり階段を降りて受話器を取った。

「…はい」
『てめーっ、つぼみ!一人で帰るんじゃねえよ!』
「は…」
『俺金ないし駅から遠いしどうやって帰るんだ!』
「知らないわよ、歩けばいいでしょ」
『ふざけんな!すぐ迎えに来い!!』
「やだ、自分でどうにか」
『お前が迎えに来るまで帰らないからな!』
「じゃあ一生帰ってくるな」
『ごめんなさい、迎えに来て下さい』
「えぇ〜…」
『いや、来いよ!俺ずっと駐車場にいるんだから』
「ちっ」
『舌打ちおかしいだろ!』
「行かなきゃ駄目なの?」
『絶対来いよ!』
「はいはい…」
『待ってるからな!』
「…」

知ってるよ、深い意味のないセリフなんだって。
朋久が何気なく言った「待ってる」なんて言葉に諦めると言った気持ちがごとんと音をたてる。
今泣きやんだばかりだから、涙腺が完全に閉まりきってないんだ。あいつの言葉を良いふうに解釈して泣きそうになるって、寂し過ぎだろ、あたし。


さっきのフォーマルのワンピースとは対照的に、パーカーとジーパンという色気ゼロの服に着替えた。顔はすっぴん、靴はスニーカー、あいつに会うならこれで十分。
朋久の前で綺麗でいる必要なんてもうないのだから。

そうか、恋が終わるってきっとこーゆう事だ。
ただ自分を着飾る時間が減るだけ。
それだけの事だと思えば、失恋なんて大した事じゃない。




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