三人の男たちの冬物語(短編1)-4
女の指がゆっくりとふぐりの根元をなぞり、ボクの柔らかい白い内腿へと這い始める…。
白い細く伸びた指先は、どこか淫猥に蠢くようにボクの腿肌をねっとりと撫でる。蕩けるように
柔らかい指先に、ボクの下半身が小刻みに震えている。ボクは、その淫靡な感触に刺激されるよ
うに、ペニスをビクビクと小刻みに震わせ、熱っぽく息を吐き始めるのだった。
…ああっ…うっ…
ボクの額にしだいに脂汗が滲んでくる。指の快感にボクは酔ったように眉根を寄せ、唇から嗚咽
を洩らす。
…わかってるでしょう…わたしが、いいというまで射精はだめなのよ…
笑いながら彼女の指が、ふたたびボクのペニスをとらえる。その指先は、透明の汁で潤んだペニ
スの亀頭を撫で上げながらも、どこかしっかりと閉じられたペニスの奥を擽るように揉みほぐす。
燿華という女は、楽しそうにボクのペニスのえら縁を指で執拗になぞり始めた。
そして解きほぐされた小さな貝肉のような鈴口からは、女の指に疼くように溶け出した透明な
粘液が滲み続けていた。
女の棘のような爪の先が、ペニスの鈴口を弄くり始めたとき、ボクはその甘美な肉の疼きに喘ぎ、
悶えながらも、その爪が与える痛みの快感に酔っていく…。
カヨコさんにこんなふうにペニスを弄ばれたことはないけど、その女の指の蠢きは、やがてカヨ
コさんのからだのすべてを思い出させてくれた…。
そのとき、なぜかカヨコさんの顔が、ボクのまぶたの裏で、微睡むように何度も浮かんでは消え
ていく。
やがてボクの体全体が、カヨコさんを烈しく求めているように急に熱を帯びたとき、堅く屹立し
た亀頭の裂け目が小刻みに痙攣し、女の指に戯れるように白濁液がどくどくと流れ始めた…。
カヨコさんがボクのアパートを出て行ってから半年後、彼女からの手紙がボクに届いた…。
…故郷の街で幸せな結婚生活をおくっています…というカヨコさんの言葉…それがウソだという
ことをボクは知っている。カヨコさんが幸せなんて言葉を言ったことは、これまで一度もなかっ
たからだ。
あの街で幼いころ両親を失い、あの街で不倫の恋に傷つき、手首にカッターナイフをあてた彼女
が、あの街で幸せなはずがない…ボクはそう思っている。
あの街で傷ついたカヨコさんが上京し、美容師をしながらも、密かにSMクラブのS嬢となって、
鞭を手にしていた理由が、ボクには何となくわかるような気がした。
カヨコさんは、結婚したあの男にどんな風に抱かれているのだろうか…いや、あのきれいな指を
男に舐められ、もしかしたら、男はカヨコさんの指の中で射精を繰り返しているのかもしれない。
手紙に綴られているカヨコさんが書いた文字が、胸を塞ぐほど息苦しかった。喉元を掻き毟りた
いほど、ボクの中が渇ききっていた。ボクは、いったいカヨコさんに何をしてあげられるのかわ
からなかった。
自分は、カヨコさんを好きだったのか…ほんとうに…どんな風に自分はカヨコさんを抱きしめて
あげたのか…今でもカヨコさんを愛しているのか…繰り返される自問が、自己嫌悪とともに脳裏
で烈しく渦を巻く。