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三人の男たちの冬物語
【SM 官能小説】

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三人の男たちの冬物語(短編1)-1

午前零時…あなたは、ベッドの中でなかなか眠りにつくことができなかった。

少しだけ口にした白ワインが、からだの隅々まで心地よく火照らせているというのに、不思議な
静寂が心の中を冴えさせていた。いつものように週末だけ書くネットの投稿小説もなかなか書き
進まない。

部屋の片隅の壁にかけられた色褪せた乗馬鞭が、スタンドライトの淡い灯りに照らされている。
もう何年も使っていない鞭が、あの頃の懐かしいあなたを思い出させる…。


ずっと以前のことだ…それはSMクラブ「ルシア」で、あなたが燿華という名前でS嬢をやって
いた頃、手にしていたものだった。


暖房のためか、あなたは汗で湿った下着の上にナイトガウンを着ると、マンションのバルコニー
に出てみる。冬の夜空に、白い雪がきらきらと螢のように舞い、斑模様の光を描きながら、音も
なく暗闇の中に溶けていく。

あなたは、ゆっくりと煙草に火をつける。冷気といっしょに煙草の煙が、あなたの体の中に心地
よく滲み入る。

もう、あれから何年になるかしら…

ふと、あなたの脳裏に、あのころ「ルシア」で出会った三人の男たちの顔が、ほのかに浮かんで
くる…。



 ――――――――



ボクがMだから、カヨコさんを好きになったわけではない…ほんとうにそう思っている。



…結婚するかもしれないわ…

突然、同棲していたカヨコさんがボクに言った。


二十五歳のボクが、三十二歳のカヨコさんとこのアパートで同棲を始めたのは、三年前だった。
ふとしたことから知り合い、カヨコさんとの関係が始まった。

彼女は高校を卒業すると、瀬戸内海のあの街で美容師になった。そして、二十六歳のときに
上京したあとも、ずっと東京で美容師を続けている。ボクはというと、バイトをしながら夜間の
専門学校に通っている。

ボクもカヨコさんも、幼い頃両親を亡くしている。そんなことが、ふたりをなぜか身近な存在に
感じさせたのかもしれない。

あのころボクは失恋し、傷ついていた。そんなボクを最初に誘ったのはカヨコさんだった。
そして、半年ほどつきあったあと、いっしょに住もうか…と言い出したのもカヨコさんだった。

いつも髪を短くしたボーイッシュなカヨコさんだったけど、何よりもカヨコさんがボクの頬を撫
でる指が、ボクの心をなぜか和ませてくれたのだ。
細くて滑らかで、肌が透きとおるように白く、それは大理石の彫刻のような優雅な艶やかさを持
っていた。

そして、ボクにとってはどこまでも優しさにあふれた指だったのだ…。



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