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三人の男たちの冬物語
【SM 官能小説】

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三人の男たちの冬物語(短編1)-5

あれからもう五年が過ぎた…。

今年、ボクは三十歳になる。ボクはバイトをやめ、真新しいスーツで小さな商事会社の営業マン
として働き出した。

カヨコさんから送ってきた二年前の最後の年賀状には、住所の記載はなく、ただ彼女の旧姓だけ
が書かれてあった。そして、そのハガキの隅には、カヨコさんが離婚したことが、小さな文字で
綴られていた。

今、カヨコさんがどこにいるのかは、わからない。一度、彼女の嫁ぎ先だった以前の家を探して
電話をしたけど不通だった。


SMクラブ「ルシア」は店を閉めたのか、今はない。

でも、今日、偶然に喫茶店で見かけたのは、確かに燿華さんだった。葡萄酒色のワンピースがよ
く似合っていた。すっかり大人の女性というか、落ち着いた美しい姿にボクはじっと彼女を見つ
めていた。

喫茶店のテーブルの上に広げたパソコンを見ながら、あの綺麗な指で煙草をはさんでいる燿華さ
んを見たとき、ボクはやっぱりカヨコさんを思い出した。
決して忘れたことはなかったけど、カヨコさんの甘酸っぱい優しい指が、ボクの心のなかに甦っ
てくる。



関東地方には、今夜からふたたび雪が降り続くらしい。ボクは職場の飲み会の帰りで、小雪が
かすかに舞う中を、地下鉄R駅に向かって歩いていた。


まさか… ほんとうに偶然だった…。


雑居ビルのSMショップへの入り口で、たまたまカヨコさんを見かけたのだ。彼女がそのビルに
入ったのを見たボクは、雑踏の中を走り抜け、彼女のあとを追った。

狭い回り階段をのぼり、SMショップの重い鉄の扉を開けた。若い店員がヒマそうにカウンター
の奥であくびをしていた。客のいない店の中を見わたす。

薄暗い店の中に入っていくと、一番奥の陳列壁に向かって佇んでいた女性…。


いた… やっぱりカヨコさんだった。

黒いコートを手にした白いブラウスとジーパン姿の懐かしいカヨコさんだった。五年前と違って
カヨコさんは髪を伸ばしていたけど、どこかやつれたような横顔をしていた。

そして、ボクに気がつかないまま、店の壁に陳列してある鞭をぼんやり眺め、その鞭に手を伸ば
そうとしたときだった。

ボクはカヨコさんの背後からそっと近づき、その白い指に触れた。


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