#02 研修旅行――初日-8
「俺と、相原さんが初対面、ねぇ……」
「――っ!」
岐島が首を回し、右に座る女子三人――いや、その最も右端にいる相原柚子葉を視界に収めた。相原は相原で、その百七十五近くある巨躯をピクンと震わせる。
――なんだ?もしかして、この二人は、
「もしかして、二人は顔見知り?」
私の胸の中の疑問を林田が代弁してくれた。
岐島はその赤い唇を歪める。
「顔見知りも何も……彼女、相原柚子葉と俺は同じ小学校にいたことがあるんだよ。ま、俺は転校してしまったけれどね」
「へぇ〜。え?じゃあ、クラスメイトだったりして?」
「そうだね。小学校一年から四年の秋――俺が転校するまでずっと、同じクラスだったよ。といっても三クラスしかなかったから、クラス替えは三年に上がるときだけ。確率はそう低くはなかったけど」
「でも、転校しても、高校でまたクラスメイトになるって奇跡的じゃないですか」
「そうかい?でも、その奇跡を誰もが望んでいたわけでもないらしいがね」
「は、い?」
「ふっ……」
岐島は一方的に言い散らすと最後に笑って、話しを収束させてしまった。
林田も、そして私も疑問符を浮かべる。
見ると、相原はその大きな身体を小さくさせて俯いていた。
いや〜な空気が流れる。私はこの空気が大嫌いだった。
「なあ、岐島?それにしても、周りに無関心なおまえが他人のことを覚えているなんて珍しいな?」
「無関心?他人に?それは誤解だね。俺は極めて周りに気を使って生きている小市民だよ」
――うそつけ。