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脚本 月の船
【歴史物 官能小説】

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脚本 月の船-2

男「お頭たち…大丈夫ですかね?」

放心したように女は暗い水面を眺めているばかりで言葉を返さない。

男「なぁに…狐火のお頭の事だから、心配ねえや
きっと上手く逃げおおせてますぜ…」

男は自分の問いかけに納得するように頷きながら言葉を付け足した。

女「着物を着なよ…
夜はもう冷えるから風邪ひいちまわ」

女は白い手で自分の姿を覆い隠していた男の着衣を差し出す。

男はそれを受け取るとまだ用心して、袖を通さず肩に引っ掛けた。

男「それにしても、あの闇医者が御上に通じてたなんて…
人の良い面して、とんでもねえ悪党だ」

水面を見つめたまま男がそう呟くと女は手首を口元に当てて押し笑う。

女「ふふふ…お前さん、おかしな事言うね
盗賊一味はあたいたちの方じゃないか」

男は女を振り返り、一時それを見つめていたが取り戻したようにぱっと明るい表情になる。

男「違えねぇ…はは…」

頭の後ろに手を回す

SE 水面の音

船は揺れながらゆっくりと漂う。

男「これからどこへ流れるんでしょうね?」

女「さぁね…海に流されちまうんじゃないのかい」

男「海の次はどこまで流れるんでしょう」

一息置いて、苛立つように女は言い放つ。

女「海の次は海に決まってるじゃないか
どこまでも海さ」

女の怒声に男はしゅんとなる。

男「面目ねぇ…
俺が棹をちゃんと掴んでいれば…
もう無我夢中で…」

そっぽ向いて膨れっ面をしていた女が向き直る。

女「もういいよ、どこに付けても河岸は役人でいっぱいだろうし…
第一こんな深瀬に入っちまえば竿なんざ立ちゃしないよ」

男「面目ねぇ…」


闇夜の切れ間から月が覗いてあたりは蒼い光がさす。

その向こうはといえば依然、真っ暗で何も伺えない。

船は揺らぎながら、もうすでに海に出て行ったのかも知れない。


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