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脚本 月の船
【歴史物 官能小説】

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脚本 月の船-3

女「静かだねぇ…こんな静かな夜は久しぶりだよ」

男「俺は楽しかったですぜ
お頭がいて、姐さんがいて…
蝮の兄貴や黄金蜘蛛の…」

女「もう、よしなっ!」

女はまた苛立って男を怒鳴りつけた。

船が水面に揺れる音だけがその響きを包み込むように吸い込んでいく。

女「見たんだよ…
血しぶき上げて取り押さえられるあの人の姿を…」

男「お頭が…でもまだ死んだって決まったわけじゃ…」

女「いずれにしても明日にゃ三尺高い台の上さ…
狐火の半蔵もこれで一巻の終わりさね…
あたいたちにもう戻る場所なんざありゃしないさ…」

男「俺たちはこうして逃げのびたじゃありませんか」

女「浮かれてんじゃないよ!」

女はまた怒鳴りつけて、にわかに顔を曇らせる。

女「怖いんだよ…
十四の時から盗賊一味に加わったこのあたいがさ…」

男はとっさに肩に羽織った着物を覆い、再び女を押し倒した。

そこへ向こうから数隻の船が灯す提灯の灯りが近づいてくる。

役人(声)「伊東様、あれに怪しい船が…」

上役(声)「ふむ…流れ船のようだ
誰も乗っていない」

役人(声)「吟味しなくてよろしいでしょうか」

上役(声)「狐火の一味もまさかここまでは逃げおおせまいて…
大方丘の方では一網打尽にされておる頃じゃ、さっさと戻って一杯つけるぞ」

SE 水の音

水面を近づいてきた提灯の灯りは再び遠退いて、やがてまた月の灯りだけが船を照らす。

女の体にぴったりと覆い被さって身を潜めた男。

男「姐さん…姐さんはこの俺が命に代えても守ってみせまさぁ」

そう呟く男の体を押しのけて女は体を起こした。

女「なにさ…使いっぱだってまともにこなせないくせしてさぁ…
生意気言ってんじゃないよ」

男「姐さん…」

SE 水の音

しばらく間を置いてから何かに憑かれたかのように女は笑い出す。

女「あははは…十二の時に手込めにされちまった奉公先を飛び出ちまってから、蕎麦屋の下働きから掏摸(スリ)の見習い…
ついには夜鷹の真似事までして、流れ流れて盗賊一味かね…
この先まだまだ流れつくかいね?
寒いね…まったく」

男は肩にひっかけた着物を脱いで女に纏いつける。


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