シグナル¨1¨-5
「頼れる人だって思ったから」
「え、ええっ??僕が?!」
思わぬ答えが返ってきて間抜けな声を出してしまった。
それに気付いた速人がにやにやしながら僕を見ている。
「盛り上がってんな成敏。いきなり抜け駆けすんなよ」
「そうじゃない!驚いただけだって!」
「遥、やる時はやるんだね。おとなしそうな顔して」
「違う!やめてよ弥生!」
もう、織田さんまで・・・
何だか変な雰囲気になったところで、丁度時間になってしまう。
僕達は授業が始まったらまた会う約束を交わして、駅の前で別れた。
「いやあマジでついてんなぁ。入学早々、あんな可愛い子達と知り合いになれてよ」
「そうだな。3人とも顔の造りがいいとは、奇跡だ」
「・・・・・・」
ベンチに並んで座り電車を待ちながら話す。
とはいってもやっぱり僕は2人の会話を聞いているだけだ。
「杏子ちゃんいいな。話を聞いてる時のにこにこした顔がいいわー」
「弥生、か。さばさばしてていい感じだ」
あれ?2人ともよく話してた子がタイプじゃないのか?
速人は織田さん、賢司は葉川さんと気が合いそうだったのに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人は急に黙り込んで僕を見つめている。
「・・・なっ、何だよ?」
「お前は誰がいいんだ、答えろ成敏」
「俺達はちゃんと言ったからお前もだぞ、ほら早く」
だだ誰って言われても・・・
自他共に認める優柔不断な僕に選べというのか、2人とも。
「さっさと吐いちまえよ。楽になるぜ」
「コーヒーくらいなら飲ませてやるぞ。さあ、吐くんだ」
速人はともかく賢司まで悪乗りしている。
「いやあ僕はみんな大好きだから。誰かなんて選べないよ」
「会ったばっかで大好きとか適当な奴だな」
「どっちつかずは良くないぞ成敏。ここは言わなきゃいけない流れだろう」
うう・・・め、目がマジなんですけど。
別に不良でもないのになんで目付きが良くないんだよぉ。
「いやだから、選べないって。ちょっとしか話してないだろ?」
「そういやあ、あの子としか話してなかったよな。なあ速人」
「そうだそうだ、成敏はあの子しか見てなかったはずだ」
「だ・・・誰だよ?」
「だからさっさと吐いちまえっての。自分が一番よく分かってるだろ」
本当は分かっていた。
僕が3人の中で一番気になってた子。
後を引くのも気持ち良くないし、思い切って言ってしまおう。考えるよりやれば楽だろう。