EP.FINAL お兄ちゃんと超ラブラブ-4
「悪くはないぞ。この色だと少し大人っぽく見えるしな」
「ちょっと触りすぎじゃない。も、もういいってば」
褒められる事が何だかむず痒く、ひかりはそれ以上髪の話をされるのを嫌がった。
典明が触っていた髪を離すと、するりと指先からこぼれ落ちた。
「・・・ひかり・・・」
その指は一旦自分の所に帰らず、ひかりの小さな顎に触れた。
くい、と杯を傾ける様にその顎の角度をずらす。
「お、お兄ちゃん?」
「じっとしてろ。ちょっとだけ、な」
典明の唇が近付いてくるのを見て、ひかりはこれから何をされるのか理解した。
(お兄ちゃんの唇、すごくきれいな色・・・)
ずっと近くに居たのにこんなに美しい唇だと気付かなかったのは、何故だろう。
典明はずっとひかりを見ていたのに、ひかりはちゃんと見ていなかったからだろうか。
(変態だからもっと汚いんだと思ってたけど、こんなに綺麗なら・・・されても、いい・・・)
嫌悪感はもう無かった。
唇が重なり、典明とひかりが僅かな部分だけ繋がる。
(私、お兄ちゃんとキス・・・してるぅ・・・)
何かしてくるのかと思っていたら、典明は静かに唇を離した。
そして、ひかりの唇をなぞって微笑む。
まるで道端に咲いている花に触れる様に優しく・・・
「お兄ちゃん・・・次はいきなり押し倒すつもりでしょ」
「おっ、お前、ここは妹ならお兄ちゃんとキスしちゃった、えへ♪って王道の萌え台詞を言う場面だろ」
「だって、今までこうやって、ちゃんとキスしてくれたこと無かったから・・・」
「まあ仕方ないか、初めてだからな」
初めて、という言葉で今のキスが最初だという事実を、ひかりは改めて認識した。
(もっと違うものだって思ってたけど、意外とこんなものなのかな)
ひかりにとってはキスをした状況よりも、相手の方が重要だった。
あれだけ拒絶していた兄とした後で、実はそれ以外の相手を想定していなかった事に気付く。
「今からでも遅くない、さあひかり。口元に手を当てながら、お兄ちゃんとキスしちゃった、えへ♪と言うのだ」
「いや、そんな楽しそうに言う程テンション上がってないし」
「初物は一度きりだぞ?!お願いだ、ここはひとつお兄ちゃんの顔を立てると思って」
たった今見せたばかりの微笑みは何処へやら、すぐシスコンに戻ってしまった。
ひかりはやれやれ、とわざと聞こえる様に漏らして、典明に体を向ける。