EP.3 お兄ちゃんは超コスヲタ-2
そんなある日−
その日は典明は部活が無く、2人とも予定が無い日にそれは起こった。
「もう10時か〜。ちょっと寝すぎちゃった・・・」
欠伸混じりに呟きながら階段を降りていくひかり。
腹が減ったので一応起きてみただけで、適当に食べたらまた眠るつもりだった。
だが、間もなくその眠気も空腹も吹き飛ばされる事になる。
「・・・・・・」
冷蔵庫を開けようとしたら、トイレから看護婦が出てきた。
言っている事が理解できないと思うが、ありのままの様子を書いてみた。
「やだなあ、見つめないでくれよ。そんなに似合ってるか?」
「いやああああああ!!」
ひかりに牛乳を投げ付けられ、看護婦もといナース姿の典明は、頭からどっぷりと浸かってしまった。
服は当然、髪や指先まで白いものがしたたり落ちていくその姿は、下品かつ悪趣味極まりない。
これが変態でなくひかりならサービスになったかもしれないのに・・・
「なんでそんな格好してんのよ!」
「お、お前がぶっかけたんじゃないか。余程溜まってたんだな可哀想に」
「違う、それよ、服!なんで着てるの、どこで買ったのそんなもの!」
「お前に着てもらうつもりだったのにびしょびしょだ、仕方ないがこれは後回しだな」
寝起きで強烈すぎる姿を見てしまい、眠気がどこかに旅立ってしまった。
平日は真面目に部活に行ってると思ったのに、悪い意味で裏切らない阿呆だったとは。
「せっかく作ったんだし、まずは自分で着てから、ひかりに着せたくてな」
「・・・買ったんじゃないの・・・?」
「最初はそうだったが、どうもしっくり来ないんだ。痒い所に手が届かない出来でな、結局自作が一番なんだよ」
全く知らなかった兄の一面を知ってしまい、やはりこの男はぶれが無いと呆れてしまった。
「さあひかり、どれがいい。好きなの選んでいいぞ」
普通は言われたら嬉しい言葉のはずだった。
だが、自分の前に手際よく並べられた衣装を見ると、残らず破り捨ててしまいたくなってしまう。
ナース服(スペア)、警官、エプロン(素肌用)、巫女、シスター、そしてスクール水着・・・
ひかりは目眩を起こしてしまい、頭を押さえた。
「実はずっと前から作ってたんだ。お前に楽しんでもらいたくてな」
「全然楽しくないんだけど・・・」
「そうかそうか、自分に自信が無いのか」
その言葉に思わず眉を吊り上げた。
明らかに挑発しているのが分かったが、煽られるというのは面白くは無い。
「着せようったってその手には乗らないから」
「そうだな、あまりスタイルがいいとは言えないしな」
冷静にならなきゃと思っている気持ちとは裏腹に、一度生まれた怒りはみるみる広がっていく。
スタイルが良くて女性の服でも着こなせる兄に言われたので、妹として悔しかった。