冬の日の出来事。-5
「これか?これは――…」
繋いだ手は急に離されて、その間を抜ける風がいつもより冷たく感じた。
その手で朋久は買ったばかりのプレゼントの包みをびりびりと破り出す。
「何やってんの!今なら返品できる…のに、」
中から出てきたのはマフラー。それをあたしの首に巻いてくれた。
「お前にあげようと思って買ったの」
「…」
「つむぎに何あげたらいいか分かんなくてさ、お前寒い中付き合ってくれたから、そのお礼」
「…サンタに操られたの?」
「まーね」
さっきまでイライラの原因になっていた笑顔に、今度は泣かされそうになる。
こいつのこーゆうとこよ。
だからあたしは諦められないんだ。
「つぼみ」
「ん?」
「気ぃ使わせて悪かったな」
「…」
「ほんじゃ、ありがとな」
「あ、朋久!」
「何?」
きっとこいつは、今から一人で泣くんだ。つむぎの事を思って、一人で…
「何でもない」
「ん」
貰ったマフラーで口を隠した。
じゃないと、「好きだ」って叫んでしまいそうだったから。
ずっと好きだった。
だから朋久の事は手に取るように分かる。
あいつはいまから泣くけど、でもバカだからこれからもつむぎを好きでいるんだ。
あたしがそうしてるように。
新品のマフラーからはさっきまでいたお店の匂いがして、真剣に悩んでいた朋久の顔が浮かんでまた泣きそうになった。
手を繋いだ温もりが消える前にポケットにしまった。
幸せで、切ない。
そんな、冬の日の出来事。