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冬の日の出来事。
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その後の出来事。-1

あたしの妹はとにかく行動力がある。
彼氏にプロポーズをされた日から一年とちょっと。その間に信じられないスピードで互いの両親への挨拶を済まし、すぐに式場を予約。呆れるほどの集中力で招待客のリストアップや、やたら凝った招待状の作成なんかの雑務をこなす。それも楽しそうに。
そして、今日という日を迎えた。


朝からいい天気だった。
冬の冷たい空気がそうさせてるのか、澄んだ青空に霜の降りた草花がキラキラと輝いてる。
単純に『妹の結婚式』だと思うと、嬉しくてつい顔が綻ぶ。

単純にそう思えるのならね。


チャペルでの式を終え、出席者の方に深く一礼した満面の笑みの新婦とぎこちない動きの新郎。
たくさんの祝福の声と色鮮やかなフラワーシャワーに迎えられた二人は、何度も目を合わせては微笑んでいた。



幸せいっぱいの時間も終わり、友人関係者その他諸々の出席者達が、引き出物の入った大きな紙袋を下げてぞろぞろと帰っていく。
親族達は式場の用意した送迎バスでさっさと帰宅。
姉であるあたしは準備の都合で両親とは別々に来ていたから、後で帰ると告げて式場のロビーに残った。

横にいるこいつも。


「いい式だったねー」
「あー…」
「ブルーのカラードレス似合ってたねー」
「あー…」
「彼の好きな色なんだってさ」
「あー…」
「浮かない顔してんじゃないわよ、バカ朋久」
「うーるせー…」

死んだ魚のような目でぼんやりと天井を見上げている。

無理もない。
目の前で片思いの相手が誓いの言葉を交わし、指輪を交換して、更にキスまでしたのだから。

「せめてやけ酒できたらね〜」
「どうせ一滴も飲めねぇよ」
「欠席すりゃ良かったじゃん」
「式をぶち壊してやろうと思ってたの」
「そんな度胸ないくせに」
「うるせーな」

アルコールの飲めないこの男は自身の灰色のオーラとは程遠い華やかな色のオレンジジュースをグビグビと飲み干し、「ぷはぁっ」と派手な声を出した。

「大体お前が人のこと心配できる立場かよ」
「は?」
「妹に先越されたくせによぉ」
「うるさいな」
「しかし、あれじゃね?」
「あれ?」
「披露宴が出会いの場所なんて絶対嘘だよな」
「あんた出会い求めて来てたわけ?」
「転んでただで起きれるかよ」
「ちっ」
「舌打ち!?何で!」
「別に」

ほんとやだ。
妹に先越された事なんかどうでもいいっての。
気に入らないのは結局あんたの目にあたしは写らないって事だよ。
そりゃ好きな人の結婚式に出席させられるのはキツイと思うよ?でもさ、それはしょうがないじゃん。あたし一年前にもちゃんと言ったよ?その恋は実らないよって。



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