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God's will
【その他 官能小説】

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狂気の夜-2

 僕はルカを抱きしめたまま横に回転し、ルカの上に馬なりになる。そしてルカの着ていたTシャツの上から彼女の胸に触れる。僕が想像の中で何度も触った胸だ。その感触が、今現実の感触として僕の手のひらに蘇る。「いいよ。大丈夫だからそのまま」ルカが言い、僕は貪るようにキスをする。舌を絡める。耳を齧る。胸を強く揉む。ルカの唇から吐息が漏れる。ちらりとルカの手首に視線をやり、そこに触れると血はもうほとんど止まっている。「ルカ、どうして」と僕は半分泣きながら言う。「どうして俺たち、こんな」「ごめんね」「ルカ」「ごめんね。紫音」「いいよ」「優しいね」「優しくないよ」だって、こんな状況で僕は君を抱こうとしているんだ。「優しいよ」「優しくないって」「好き?」「好きだよ」「愛してる?」「愛してる」僕は言う。「愛してる」僕はルカがもう震えていない事に気づく。「触るね」と言い、ルカの手のひらが僕のペニスに触れる。僕はルカのTシャツを捲り上げ、ブラをずらし、乳首を吸う。ルカが静かに喘ぐ。「紫音、脱がせて」「うん」僕はルカの服を丁寧に脱がせる。そして、自分の服も脱ぐ。僕のペニスは勃起している。裸になった僕らは重なるようにベッドに倒れこむ。ルカの裸体を抱きしめながら、僕は心のどこかではルカに求められているのが自分ではないという事に気づいている。僕がただ、彼女の心に宿った悪魔を浄化させるために存在している事に気づいている。だから、ルカは僕に「ごめんね」なんて言う。だから、ルカは僕に「優しいね」なんて言う。

「紫音、きて」とルカが言ったのを合図に、僕はペニスをルカのぬめぬめしたヴァギナにあて、ずぶずぶと中に入る。その時のルカの微笑が致命的なまでに僕に対する哀れみに満ちていて、僕の頬には思いがけず涙が伝い落ちる。僕は泣いている。この時、初めて僕は本当の意味でルカを失ったことに気がついたからだ。せめて、そんな顔しないでくれよ、と僕は言葉には出さずにそう言った。

と、唐突にルカがキャハハと笑い出す。強い雨の降り続く音だけが聞こえていた部屋に、彼女の笑い声が満ちていく。キャハハ。キィヤァハァハァ。僕は黙ってルカの姿を見ている。形容できない感情を僕は感じる。それは恐怖なのか、慈しみなのか分からない。ベッドの上でもだえるように体をくねらせながら彼女は笑っているが、顔は笑顔を作らず、眼球は見開かれ、その視線は一点を見つめることなくきょろきょろとあちこち動く。笑い声は徐々に大きくなり、先ほどと同じように再びルカに震えが襲いかかる。僕のペニスが彼女の膣の奥を突いても、彼女は喘いだりはしない。震えながら笑っている。「ルカ」と喋りかけるが、反応はない。キャハハ、キィヤァハハと笑いながらルカは爪を噛む。見ると、ルカの爪の長さは常人の三分の一ほどしかない。きっと何度も爪を噛んでいる内に爪がなくなってしまったのだ。それでもなお彼女は爪を噛んでいるから、爪を噛んでいるのか肉を噛んでいるのか分からない。多分歯は爪ではなく肉を噛んでいる。ルカの指先からやがて血が滴り、僕は慌てて彼女の手をとり指を見ると、よほど強く噛んだらしく、そこには細くて深い穴が空いていて、血が赤黒く溜まっている。「もっと激しくしてよ」ルカはうつろな目をして僕に懇願し、僕は無我夢中に彼女のヴァギナをかき回す。脳髄を快感が駆け抜けていくのを感じる。「ねえ、羽をもいで」とルカが言い、その言葉に幼き日のトンボを連想した僕の両手をルカの腕がとり、首に当てる。「そのまま締めて」「首を?」「そう。首を絞めてするの」「気が狂ってる」「キャハハ」「ルカ。どうして」「愛してる?」「何がなんだか分からない」「愛してるって言って」「愛してる」「人殺しでも?」「誰が?」「私が」「それでも愛してる」「やっぱり優しい」「そんなことない」「私ね、赤ちゃん殺しちゃった」僕は何も言わない。「赤ちゃんね、殺しちゃった。お母さんは仕方なかったって言うけど。仕方なくなんかない。自分を責めるのは止しなさいって言うけど・・・ねえ、首を絞めて」「もっと?」「うん」「ねえ、私が欲しいのは救いじゃないの」「え?」「いいの。そのままで」「ルカ・・・」「いいの。何も言わないで。ねえ、愛してる?」「さっきから言ってるだろ」「聞きたいの」「愛してる」「それじゃあ中に出して。愛してるなら」「うん」「ねえ、見えるよ。紫音。やっぱり、紫音って天使みたい。腕が。三本目の腕が生えてる」うつろな目のままルカは言う。「愛してるって・・・そう言いながら中に出して。そして三本目の腕で殺して。自分じゃうまく出来ないの。だって、もう私は一人じゃないから。一人じゃない私は自分で死ぬことすら出来ないの。・・・お願い紫音。紫音にしか頼めないの」首を絞めたままぐちゅぐちゅと音を出しながらルカを突き上げる。ルカの首を絞めているのを彼女は三本目の腕と形容したがそれは違っていて、それは紛れもなく僕自身の腕だ。彼女の首を絞める手に力を込める。すると、ルカの体の震えが治まる。快感の波がやってくる。彼女の顔が徐々に血色を失っていく。雨の音が聞こえる。やけに大きく。やがて、ルカの吐息が聞こえなくなる。愛してる、と呟きながら僕は射精する。きっとその言葉は彼女の耳には聞こえていない。彼女の口からは舌がはみだしている。分厚くてピンク色の舌。僕だけがはあはあと息を吐き出している。僕はルカの顔を眺めている。呼吸を整える。やがて部屋には雨の降る音だけが聞こえるようになる。ペニスをルカのヴァギナから引き抜くと、多量の精液がどろりとたれ落ちる。僕は泣く。愛してると呟く。彼女は何も言わない。彼女は死んでいる。僕はしばらくの間放心状態で、自分の手のひらを見つめている。そして、指の間からそっと何かが零れて行くのを見つめている。それはまるで、手のひらからこぼれる砂のように。静かに。しかし、はっきりと。


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