Island Fiction第2話-2
屋敷には五人のメイドが働いていた。
彼女らはお父様とわたしたちの身の回りの世話をする。
起床から就寝まであらゆる面倒を見る。
風呂場で背中を流すのもその一つで、体に触れられるので特に緊張する。
風呂場は大浴場と呼べるほど広く、娘たち4人でいっぺんに入っても持て余してしまうくらいだ。
浴槽の横にベッドがある。
その上に乗って寝そべると、メイドが近づいてわたしの体を洗い始めた。
ここでもメイドはロボットのような淀みのない動きで作業を進める。
着ているものにしても、味も素っ気もないワンピースの水着だ。
あくまでも一歩引いた立ち位置にいるという意思表示だった。
メイドが石けんを泡立てたスポンジをわたしの体に撫でつけた。
足の裏から指の間一つ一つ優しく洗い上げる。
下半身の大事な部分は特に念入りだ。
ヒダの間に指を滑らせて丁寧に汚れを落とした。
「はぁぁ……」
気持ちとは裏腹に桃色の吐息が漏れた。
「どうしたの? なにかあった?」
隣にいるスミレ姉様はわたしの複雑な心情を見抜いていた。
姉様は十五歳で、お父様の子を身ごもっていた。
妊娠八ヶ月だった。
ポッコリと膨れたお腹が、石けんを洗い流したお湯で濡れてテカテカと光っていた。
「もう生まれちゃいそう」
わたしは話をそらして誤魔化した。
「赤ちゃん、すごく元気なのよ。さっきもお腹を蹴ったの」
姉様は下がり気味の目尻をさらに下げて言った。
その笑顔はわたしを優しく包み込み、肩に張り付いた強ばりを取り去った。
「いいなぁ。わたしも赤ちゃん欲しい」
スミレ姉様は明朗闊達で、妹たちの面倒見がよかった。
まさにお姉さん的存在だった。
姉様の妊娠は我がことのように嬉しかった。
一通り体を洗い終えると、今度は美容のためのローションが塗られる。
手のひらでマッサージをされる。
メイドの手つきは意図的に官能を刺激した。
「ふうぅぅん……」
わたしは声を上げた。
おねだりするように腰をくねらせた。
しかしわたしの要望は基本的には受け入れられない。
メイドは決められたルーチンを忠実に守るだけなのだ。