留守番の夜-1
「あ〜あ、雨、ユウウツ!」
親友の結衣がぼやく。
「いいじゃん、部活休みになって、早く帰れてるんだし。」
高校2年、テニス部所属の亜紀子は言った。
秋の雨の中、結衣のふたつ結びの髪が揺れる。
たわいない会話をしながらの下校。
「ねぇ、亜紀子、そろそろスキな人できた?」
「ムリムリ、ウチのガッコは、ガキっぽいのばっかだもん」
「亜紀子はブラコンだもんね〜。
でも、そろそろ初恋してもイイのにねっ?」
くすくす笑いながら、大人っぽい結衣は言う。
「ちょっ…あたしブラコンじゃないもん!
それより!結衣はカレシとアツアツでいいよね〜」
陸上部の結衣の彼は、雨でも容赦なく部活だ。
(ま、だからこそ今日は一緒に帰れるんだけどね。
結衣は、女のコらしくてウラヤマシイ。
そういや、アニキも前、かわいいって言ってたし。)
黒いストレートのポニーテールの先を雨に濡らしながら、亜紀子は一人で嘆息する。
恋はともかく、あまり女のコらしくなれないのが、亜紀子の悩みだ。
その日は、家に帰っても、誰もいない。
両親は法事で泊まりがけ。
ハタチになったばかりの兄、貴哉は、最近は飲み歩いてばかり、今日も何をしてるのやら亜紀子の知る処ではない。
…―独りで留守番。
しかし亜紀子には、1つ楽しみにしているコトがあった。
あり合わせで炒飯等を作り、そそくさと食べ終える。
時刻は21時半。
TVの前のソファに座り、チャンネルを適当に合わすと、おもむろにケータイを開いた。
10分も経ってくると、TVの雑音に混じって、甘い声が聞こえてくる…
「んっ、ふ…ぁん…」
ケータイを握りしめ、一心に画面を見つめている。
読んでいるのは、いたって普通の官能小説。
それでも、高2の処女には充分で…。
「ぁっ、あっ、んふぅん…」