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描き直しのキャンバス
【学園物 恋愛小説】

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描き直しのキャンバス-11

***
 診察の結果は骨折だった。
 保健室で適当に診てもらったが、赤紫になる手の甲に不安を感じたクラスメートが青井に告げたのがきっかけ。急遽秀人は早引けをして、近くの整形外科に向かった。
 まさか殴った側が骨折するとは間抜けな話だが、拳を作っていないとそういう事があると外科医に言われた(その後『拳を作るときは、小指から曲げていって人差し指から折り返すように握るんだ。今度はそうしろ』と言われたのが印象的だった)。
***
「はい、そうです、やっぱり折れていました。今から戻ったほうがいいですか……そうですか。はい、失礼します」
 青井に事の報告をする。時間は既に放課後、今更戻っても掃除の邪魔にしかならないので今日は帰れとのことらしい。
(……でも先輩はこのことを知らない。あの人のことだから後できっと怒ると思う)
 はるかの顔を思い出すと少し痛みが引くだろうか? ……残念ながら、今はそんな気持ちも起こらない。
***
「君ってホントバカ……なんで殴ったほうが骨折するのよ? 当然殴られたほうも病院送りよね?」
「いえ、保健室で寝ていたそうです。多分今は外で走っていると思います」
 はるかはわざとらしくため息をついて、前髪をかき上げるとオデコを叩く。『ペチッ』と貧弱な音を立てた後、目付きを細めて、低い声で呟く。
「なんでそんなことしたの? まさか掃除当番を代われといわれたから? そんなハズないよね」
「それは……」
 あの時石垣が言ったこと……。
――如月って人、美術部の顧問とやりまくってたんだろ? お前もしっぽり出来たか? それが目的なんだろ――
「言えません……」
「ふーん、まぁいいわ。でも利き手を折っちゃったんじゃ絵を描くのも無理よね……それじゃ部室の掃除……ってそれは無理か。あはは……はは……ど、どうしたの? そんなに怖い顔しちゃって……」
「先輩、先輩はあの人、前の顧問の人とどういう関係だったんですか?」
「それは……秀人君に関係あるかしら?」
「その、先輩の噂を聞いて……」
「……」
「……」
「……ああ、そう、そういう事か……君、聞いちゃったんだ。私のこと……」
「本当なんですか……みんなの言っていること」
「ま、結構有名な話だし、そのうち君の耳にも入るかなとは思っていたわ。もしかしてそんなことぐらいで怒ったの?」
「……」
「ふーん、そうなんだ。私がバカにされて怒ってくれたんだ……まるで王子様、ナイトにでもなったつもりかしら? ありがとう」
「そんな……別に」
「なんて言うと思う?」
「え……」
「君も他の人と一緒。サイテイだよ」
「だって、俺は先輩を馬鹿にされて……」
「同じだよ。君も私の噂を聞いて楽しんだ一人だもん」
「そんな言い方……」
「だって、そうでしょ? もし私のことを心配してくれたのなら、そんなことを聞かれてどんな気持ちになるか分からない? 聞かないって選択肢もあったでしょ?」
「……」
「君が知りたいコトはなに? 私が彼と付き合っていたこと? ここで何をしていたか? それとも……」
「やめてください! 俺は、そんなつもりじゃなくて……」
「ならなんなのよ? 言ってごらんなさいよ」
「……」
「そうやってすぐ黙る……アイツもそうだったけど、なんでこう私の周りに来る男って優柔不断な奴ばっかりなんだろ」
「……」
「いつまで突っ立てるの? どうせ絵も描けないんだし帰れば? あ、そっか、絵を描くフリして私の横顔覗きたいんだ? イヤラシイ、それになんか気持ち悪い……」
「違います……」
「何処が違うのかしら? ……もういいわ、君が帰らないなら私が出てく。サヨナラ」
 はるかはそういうと、逃げ出すように駆けて行った……。


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