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狼さんも気をつけて?
【幼馴染 官能小説】

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狼さんも気をつけて?-3

***


 日が西の空を赤く染めると並んで歩く二つの影も長くなる。ただ、女学生の影は男子のそれよりも、やや長くなっている。
「あいたたた……、ったく、少しは加減しろっての」
「あはは、夢のお茶を勝手に飲んだバツだもん、思い知ったかー」
 理由は先の拷問ストレッチのせいで脚の腱が痛む明が、わざとらしくガニ股で歩く為。夢が「葉っぱでも咥えれば番長みたいだね」と笑うと、彼も苦々しく笑う。
 部活の後も二人は一緒に帰ることが多い。きっかけは一年前までさかのぼる。
 梅雨時のある日、練習が終わると同時に激しい雷雨に見舞われた。
 突然の出来事に傘のない夢が帰れずにいると、それを聞きつけた下心満載の部員達が、我先にと送り狼をかって出る。
 恋に先輩後輩、友情は関係ないらしく、話し合いから睨み合いになり、殴り合い寸前までもつれこんだ。もっとも、狼達は誰一人として傘を持っていなかった為、未遂に終わる。
 そこへ明がやってくる。しかも、手に緑の折り畳み傘を持ちながら。
 これまでの経緯を知らない彼は、止む気配の無い雨に立ち尽くす夢を見て、のん気にも「コンビにまで送ろうか」などと言い出す。
 それをきっかけに先程までの険悪な雰囲気が一転、昇降口の片隅で陸上部緊急ミーティングが開かれ、後輩の抜け駆けをいかに牽制するかを議論し始める。
 しばらくすると、明の元へと先輩が歩み寄り、にこやかな笑顔で「群雲は傘を夜神に貸すように」と告げる。「それでは自分が濡れてしまう」と抗議する彼だったが、「部員一同濡れて帰る以上、規律を乱すな」と一蹴された。
 理不尽な展開だが多勢に無勢、半ば奪われる形で傘を貸して落着となる……ハズだった。
 土砂降りの中、どう急いだところで結果は変わらないと、明はずぶ濡れで歩いていた。
 ふと気がつくと、後ろから夢がついて来る。それは校門を出てからもしばらく続き、信号待ちを繰り返すこと数回、そのうちに追いつかれ、傘に入れてもらうこととなる。
 小さな折り畳み傘に二人で入るのは狭く、濡れないようにすると肘をぶつけてしまい、かといって距離をとると濡れてしまう。ジレンマに悩む明だが、答はすぐにでた。彼が無言で手を引くと、彼女はそれを冷やかすように笑った。
 それからというもの、部活の後もこうして二人一緒に帰ることが多くなった。


***


「でさ、どうだった?」
「散々だったよ。つか、力任せのストレッチって逆効果だろっつーの……いちち」
「そうじゃなくって……カンセツキス……だよ」
 夢は言い終わるのが早いか、恥ずかしそうに頬に手を当てる。しかも、その頬は心なしか湯上りのようにほんのり桜色に染まっている。日に焼けたせいでその変化は微妙だが、いつも部活途中に横顔を盗み見ている彼ならばこそ気付いたのだ。
「それは、だから……」
 あえて触れようとしなかった話題を夢が蒸し返す。彼女は上目遣いに明を見つめ、挑むような視線を送る。そのちょっぴり顎を引いたところなど、ファッション雑誌のグラビアを意識しているのかもしれない。
 動揺を知られたくない明が顔を逸らすと、夢は楽しそうにその視界に入り込む。反射的に視線を落とすと、彼女の制服の胸元に着地する。
 白を基調とした夏服が夕焼けで朱に染まる。生地の薄いブラウスだから淡い水色のスポーツブラが透けてしまい、浮き上がるストライプが二つの丘で波を描く。
 膝上三センチの真面目なスカートが風に煽られると、不真面目な視線が生足を覗き見る。普段長めのスパッツをはいているせいか、日に焼けた肌と色白な肌が明瞭に分かれる。
 高校二年。受験のプレッシャーもなければ新入生の初々しさもない、ただ『いつも』の日常を繰り返すだけの中だるみな年頃……、その『いつも』の帰り道が途端に色気づく。


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