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狼さんも気をつけて?
【幼馴染 官能小説】

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狼さんも気をつけて?-2

「皆お疲れー、今お茶を持ってくるから待っててね。熱中症に負けちゃダメだよ」
 そう言うと夢はタオル片手に部室へと走り、ヤカンとコップを抱えて戻って来る。
 一列に並ぶ部員達にねぎらいの言葉をかけながらテキパキと仕事をこなす様子は、まさに敏腕マネージャー。そのせいか、おかしな趣味も目を瞑ってもらえている。
 明も喉が渇いているのだが、極度の猫舌であり熱いものは苦手。受け取った後もすぐには飲まず、いつも温くなるのを待つ。
 ふと視線をベンチに向けると、ペットボトルが別にあった。触ってみると微妙に温い。
(もしかして熱いのが苦手な俺のために用意してくれたとか? さすが辣腕マネージャー様、部員の体調管理にも気を配っていらっしゃる)
 都合の良い解釈と思いつつも、水分補給はトレーニングの一課程。明は腰に手を当て、一気に飲む。鼻腔をシナモンの気取った香りが通り抜けると、渇いた喉も潤う。
「ああーっ!」
 突然の悲鳴に驚いた彼は、温めのお茶を噴出し、霧で虹を描く。
「ゲホ、ゲホッ……今度はなんだよ。まさか水分補給までするなって言う気か?」
 ヤカンを片手にぷりぷりしながらやってくる夢に、明は困惑気味に言い返す。
「それ夢の! 勝手に飲むなんて酷いもん!」
 対し、彼女も一生懸命に爪先立ちして抗議するのだが、柔らかそうな頬をぷうと膨らませたところで、その愛らしさが際立ち、肝心の迫力が出ない。
「なんだ、夢の飲みかけか。別にいいだろ、減るもんじゃないし……って減るか」
 擽ったい気持ちを覚える明だが、それを気取られないよう、語気を荒げて言い返す。
「夢の紅茶返せ! せっかく用意してたのにぃ!」
「悪かったよ。後で弁償するから、それでいいだろ?」
 あまりの剣幕に明はたじろぎ、なだめ始める。しかし、夢は半眼になると、可愛らしい唇に薄ら笑いを浮かべ、不敵な態度を取る。
「……はっはーん、分った。そういうつもりなのね? ……明、夢と間接キスしたかったんでしょ? もう、ムッツリさん!」
 肘で小脇を突かれること数回、ようやく嘲笑の意味を理解した明は顔を真っ赤にする。
「ま、回し飲みぐらい体育会系なら普通だろ! というか自意識過剰!」
「あー、言ったなぁ! こんなかわいい子とキスしといて偉そうに!」
 売り言葉に買い言葉、ムキになる二人は眉をしかめて、空中で火花を散らす睨み合い。もっとも、キスはしていないのだが……。
「ハッハッハッ、仲がいいな、二人とも……」
 それを止めたのは先輩の声。妙に明るく、爽やかなのが逆に不穏な空気だが……。
「それより群雲、さっきのジャンプ、惜しかったぞ。もうちょい足が上がればいけたかもな。身体が固いんだよ。そうだ、これからストレッチしよう! 手伝ってやる、な!」
 明が抵抗しようにもがっちりと肩を掴まれ、体育館脇へと引きずられていく。
 一方、原因であるはずの夢は「がんばってねー」とまさに他人事。
 先輩一行は明を座らせると、限界まで開脚させ、力任せに背中を押し始める。
「いた、いだだ……、ちょ、ま、ゆっくりお願いしますよ」
 脚の腱が無理矢理伸ばされ、あまりの激痛に筋肉が弛緩する。
「はっはっは、こんなんで根をあげていたら記録更新なんてできないぞ!」
 それでも先輩の扱きは止まらず、むしろ激しさを増していく。
 どうやら明は大切なことを忘れていたらしい。一つは先輩が夢のファンであること。
 もう一つは間接とはいえ、キスをしたことが無いということ……。



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