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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十弐話-2

「リョーコ!」

ヒロタカも私に会うとは思っても見なかったのだろう。
まじまじと見て、草士さんと私を交互に見る。

「この辺りでお祭りがあるって聞いたので来てみたんですよ。
藤本さんのお店が近くになあったのを思い出して。」

「へぇ、そうだったんすか。」

「はい。今度うちでお祭りの特集組むんでそれでリサーチがてら
藤本さんに色々聞けたらなぁと思いまして…。
でも、お邪魔でしたか。」

そう言うとヒロタカは私をチラっと見た。
その視線には何となく悪意が混じっているような気がする。
やっぱり付き合ってるんじゃないか、とでも言いたそうな
顔で私を厭味たらしく見て、少し笑った。

「はぁ。うちの商店街のお祭りはあんまり大きくないし、
記事になるような事は何もないんすけどね。
…それでも良いなら協力しますよ。」

草士さんは髪をかきながら、どっちでも良いといったような曖昧な
答え方をする。
いつも意外とはっきり物を言う彼にしては珍しい態度だ。

「あ、すいませんねぇ。私はすぐ退散しますから。
よろしくお願いします。」

ヒロタカは意地の悪い笑みで私と草士さんを見た。


せっかくのデートなのに。
本当わたしって運がない…。
しかもよりにもよってヒロタカになんて会うなんて。
…最悪。


私は昔好きだった人と今好きな人にはさまれて
とても複雑な気持ちになりながら商店街を歩く。

「リョーコ…じゃなくて、坂本さんは何で着物なんですか。」

ヒロタカが意味がわからないという顔をしながら尋ねる。

「それは…さっきの通り雨で服が駄目になってしまって。
それで着物を藤本さんからお借りしました。」

「へぇ…。さっき会った時、一瞬誰かわからなかったですよ。
馬子にも衣装ですねぇ。」

満面の笑みでヒロタカが私に笑顔を向けてくる。
わざと厭味を言っているのか、それとも単に馬鹿で
この諺を使っているのかはわからないが、腹立たしいのは確かだった。
藤本さんは聞こえていないといった顔で黙々と歩いている。

「藤本さん、このお祭りの目玉みたいなものって無いんですか。」

ヒロタカが突然仕事モードになる。

「へぇ。目玉ですか…。一応雪ノ下神社は縁結びの神社なんで、
お祭りの時数量限定の縁結びのお守りを売ってますね。
結構それ目当てで来る女の人やカップルもいるみたいす。
あとは、商店街のお店が出している屋台や出店ですかね。」

「へぇ…。縁結びのお守りかぁ。良いじゃないですか。
屋台で美味しい食べ物とか、珍しい物って無いんですか。」

「祭りに来てくれた人全員に、無料で雪ノ下まんじゅうが
京華堂さんって和菓子屋さんから配られます。
白あんが中に入っていて、おいしいすよ。」

「結構力入れてるんですねぇ。坂本さんは女性だから
お守り、気になるんじゃないんですか。」

ヒロタカがわざとらしく私に話しをふってくる。

「別に…。私、お腹空いてきちゃったので、何か買ってきますね。」

草士さんが自分が買ってくると言ってくれたが、ヒロタカが
草士さんに話をもう少し聞きたいと言って呼び止めた。
その時も私をチラチラと故意に見ているのがわかって苛苛した。
腹が減っては戦は出来ぬと昔の人は上手い事を言う。
お腹が空いているから敵の攻撃を冷静に対処出来ずに
ムカムカしているんだと自分に言い聞かせ、
二人のそばを離れて良い匂いのする出店の方に
私は引き込まれるように歩いていった。


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