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JoiN
【コメディ 恋愛小説】

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JoiN〜EP.5〜-4

「あの、日比野さん、もう平気だから・・・」
「素直になれよ。もっと強く抱いてって」
「みんな見てる・・・」

栞菜が言うとおり、こちらを見てる同業者らしき人物がちらほら見受けられる。
そのうち何人かは声を潜めてひそひそ話していた。
こら、見るんじゃない。俺を見ていいのは栞菜だけだぞ!

(日比野、やめな。栞菜は大丈夫だよ)

絶対離さないつもりだったけど、立花さんに言われたら離さないわけにはいかない。
ひとまず抱き締めていた腕を解くと、俺の前に割り込む様に入ってきた。

「お疲れ。よしよし、さすが私が見込んだ子だ。NG出さなかったね」
「うん、立花さんがいてくれたから。あ、あとついでに・・・日比野さん、も」
「・・・ああ」

・・・へっ、そうかい。
前から思ってたけど、やはり女は女を信頼すんのか。
肝心なところじゃ男は頼りにされないんだよな。いつもそうだ、俺の女達はみんな・・・

本当になかなか墜ちないな、栞菜は。

「まだ終わりじゃないからね。自分の出番が終わっても、その日が終わるまで気を抜かないこと」
「うん。頑張る。演技見たいし、まだ油断しないから」

てっきり自分から抱いてと求めてくるのかと思いきや、俺から行った挙げ句についで扱い。

「思ったより楽しいかも。私、もう緊張しない!」
「気が早いんだから〜。でも明日もあるんだし、その意気だよ」

俺と話すよりも楽しそうじゃないか?なあ。
さすがのハイエナもそろそろ挫けそうになってきたぞ。

「すいません、ちょっといいですか・・・吸いたい気分なんですよ」

口に二本指を当てて、返事も聞かずに出ていった。
別に呼び止められなかったからいいだろ・・・それに今は、1人で居たいんだ。

廊下を歩いてて、ここが廃校だというのを思い出した。
ここから賑やかな教室を見ると、余計に寂しさが胸を締めあげてくる。
たまらず小走りで外に出て、すぐに日陰に飛び込んだ。

「日射し・・・強いな。スーツなんか着てりゃ暑いに決まってるか」

上着を脱ぎ捨てても、暑さはしつこく付き纏う。
俺に・・・寂しさを与えてはいけないんだぞ。犬に玉葱を与えるよりも危険だ。

蝉が五月蠅いなぁ・・・

しね、しね、しね
・・・しねしねしねしねしねしねしねしねしねしね・・・

シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ

あああああああ五月蠅い!!
お前らの命は短いんだから、まず自分の命の事を考えてくれ。
他人相手に連呼するんじゃない、この愚か者どもが!!

「さて、どうしたものか。今更戻るのもなぁ・・・」

おかしい、いつもの俺はどこに行ったんだ?
なんだか、あまりいい方向に物事を考えられない。昨日殆ど寝てないからかな。
立花さんにも栞菜にも言ってなかったんだけど、興奮して目が冴えちゃって・・・少しは寝たんだが、一時間も寝てないと思う。
いつの女か覚えてないが寝不足は前向きな気持ちを掻き消す、なんて言ってた気がする。

その時は軽く馬鹿にしてやったが、まさかそれを信じてしまう時が来てしまうなんて・・・


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