調教物語(その9)-3
「なにすんのさ、このすけべっ!」
正直言って、この歳になっても男達からそうされることに、
満更でもない様子だった。
精力旺盛な彼女は、昨日も夫にせがんでセックスをしたばかりである。
さすがの亭主の健もこれにはうんざりだった。
(たまには若い女とやってみたいなぁ)と呟く。
そんな人達に見られながら、
優子は研二郎の腕に掴まり、黙って何かを堪えていた。
額にはうっすらと汗が滲んでいるように見える。
堪りかねた八百屋の平太郎が言う。
「何か、悪いもんでも食べたんじゃないのかな、旦那・・
救急車でも呼びましょうか・・」
そう言いながらも、
平太郎は肉感的な優子の身体をジロジロと見つめていた。
それに気が付いた妻の弥生子は彼の尻をつねった。
「い、痛いじゃないかい!」
しかし、弥生子はとぼけて黙っていた。
それを黙ってみていた研二郎はニヤニヤしながら、
首を横に振り、八百屋の夫婦を見ながら言った。
「いや、違うんだよ、この女は感じているんだよ」
「えっ?」
平太郎と、そこにいた人達は始めその意味が理解できなかった。
「あたしには、その意味が分からないんだがね」
「そうだろうね、それを知りたいのかな?」
「へえ、気になるんでね、旦那」
男達は、研二郎の様子から妖しい雰囲気を感じ始めていた。
美しい顔を歪め苦しむ女、ふてぶてしい態度の男、
これは何かある・・
「俺は良いんだが、ここではね、どこか適当な場所は?」
研二郎は人々の顔をじっと見つめながら、ニヤリとした。
それで男達は、何となくその意味を図りかねたが、
尋常でないことは理解できる。
その時八百屋の妻の弥生子は言った。
鈍感な彼女は、まだその雰囲気が良く飲み込めていないようだった。
「あの、あたしもこの人が気になるんだけれど、
どうしてもこれからで出かけなきゃいけない用事があるんで、
そう言うわけで、後頼んで良いかしらねえ、輝子さん?」
「そう?良いわよ、私が面倒見るからこの人、行って来て」
平太郎の妻の弥生子はこのスケベな夫が気になるらしく、
この妖しい雰囲気を何となく感じ、気になってはいたが、
どうしても欠かせない用事があった。
「うん、ごめんね、急に思い出しちゃって、あなたは?」
弥生子は夫の平太郎を見た。
八百屋の平太郎が、この場所から帰るわけがない。
彼は真面目な女房がいたのでは面白くないと思っていた。
「ああ、そうだったな行っておいで・・私は健さんと・・」
「じゃあ、お願いしますね」
そう言って八百屋の妻の弥生子は、
夫の顔をと優子を交互にみつめその場所を後にした。
八百屋の平太郎と魚屋の健は顔を見合わせニンマリとした。