HappyBirthday〜金峰学園生徒会黙示録其の1〜-5
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| 波留へ。 |
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| 4月29日。波留の誕生日だな。誕生日おめでとう。 |
| 今、俺は、波留達には「パチンコに行く」とか言いながら、 |
| 喫茶店でこうして手紙を書いてる。ガラじゃなくてちょっと恥ずかしいけど。 |
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| それよりさ。 |
| もうすぐ、俺達に、血の繋がった家族が出来る。 すごいことだぜ! |
| ……俺達には、肉親がいない。 親も、兄弟も。 |
| でも、もうすぐ、俺達には家族が出来る。 |
| 嬉しいときも、楽しいときも、苦しいときも、悲しいときも。 |
| ずっと一緒に居られる家族が出来る。 |
| ちょっと苦労するときもあると思う。 |
| 反抗期は嫌でも来るだろうし、たくさん苦労すると思う。 |
| いっぱいいっぱい叱らなきゃいけないだろうし、その分、楽しい事もたくさん |
| 待ってると思う。 |
| でも、きっと、2人なら、どんな事も乗り越えていける。 |
| ずっとずっと、2人で支えあっていこうな。 |
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| P.S 今日、家に帰ったら渡したいものがあるんだ。楽しみにしててくれ。 |
| 健斗より。 |
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「なーんだ。全部、波留さん宛のじゃねーかよ……」
夏樹が何か期待していたのか、つまらなさそうにしていた。
小春の方を見ると、「後1枚あるから。読むね」と言って、今まさに読もうとしていた。
その時。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴った。
小春は、はっとしたように、「……続きは、いつか、読むから」と言って、さっさと荷物を持って、「ほら、早く、早く」と言い、俺達もつられて部屋を後にした。
帰り道。俺は、小春に尋ねた。
「なぁ、小春、いろいろあったみたいだけど、今のこの状態になるまでに、何があったんだ?」
小春は、しばし宙を眺めて「うーん……」と唸り、「今度話す」とだけ言って、後はずっと、俯いていた。
小春の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
俺は、そこで、思い出したように、「小春」と言った。
小春は、ごしごしと涙をぬぐって、「何?」と言った。
「これ……。あんな話の後だったから、渡しづらかったんだけど。喜んでくれるかな。」
俺は、小さな箱を、小春に渡した。
小春は、まるで小学生のように目をキラキラと輝かせ、泣き笑いみたいな顔をして、「開けていい?」と言ってきた。
俺が黙ってうなずくと、小春はラッピングのリボンを解き、包装紙を慎重にはがして、箱を開けた。
俺が買ったのは、宝石箱のようにキラキラした、小さなオルゴールだった。
透明なケースにはクリア、ピンク、水色の3色のラインストーンが付いていて、ケースの壁には「K.K」と、ラインストーンを埋め込んだメタルパーツでイニシャルがつけてある。
小春は小さい頃から、キラキラしたものが好きだった。
今回買ったこれも、小春が喜びそうだから、と注文した、世に言う「オーダーメイド」のヤツだった。………今月の小遣い、全部無くなったけど。
すると小春が、ハンドルをゆっくり、慎重に回し始めた。