第10話-1
早貴が何を抱えているのか、すぐに聞きたかった。
だが焦ってはいけない。特に悩みを聞くという、デリケートな事に関しては。
「ねぇねぇお祭りだって!行こうよお父さん!」
チラシの中に入っていた夏祭りのお知らせを見て目を輝かせている早貴。
いつやるのか気になって日付を見たら、もう少し先らしい。
できればその前に早貴の悩みを解決してやりたいんだが・・・
「あっやば!早く行かなきゃ遅刻する!」
「いかんな、もうこんな時間か」
いつもの様に一緒に家を出て、途中で分かれてそれぞれの行く先に向かう。
そういえばそろそろ早貴は夏休みか・・・
「どうしたね、相変わらずしょっぱい顔をしくさって」
昼休みがそろそろ終わる頃、梅田はいつものやる気の無さそうな顔で鉛色の煙を吹きかけてきた。
こうやって喫煙所で娘の話をするのももう何回目だろうな。
俺とは違い娘とはうまくいってるみたいでうらやましい。
「まーた悩みかね中島くん。趣味かい?そんなに悩んで何が楽しい」
「お前になら話せるな。実はさ・・・」
早貴に悩みがある事、どうしたら聞けるのかを聞いてみた。
そう簡単にはいかんだろうし、困った時の梅田だし、頼りにしてみた。
そしたら、すぐに返事が返ってきた。
「変に意識しすぎたら相手にも伝わるぞ。だからさ、さりげなく聞くんだよ」
「簡単に言うなよ。俺なんかより娘は勘がいいんだぞ、だからちょっとしたことですぐ気づくんだ」
「だからそこが父親として頑張るとこだ。押し切れって。気づかれても聞きたいってとこ見せろよ」
「そ、そうか。でも意外と秘密主義だからな。踏み込ませないというか・・・」
すると、梅田が深く息を吸い込んで、煙草の煙を一層多く吹き付けてきた。