第10話-3
「なーんか今日は慌ただしかったねぇお父さん」
早貴は水色のパジャマを着て髪を乾かしている。
胸元まで垂れている長い黒髪が美しかった。
やっぱり母親と同じで早貴は黒い色が似合うな、うん。
「・・・・・・」
「ん?どしたの。返事がないんだけど?」
敷かれた布団に横になる俺に被さる様に体を預けて添い寝してくる。
よ、よし、言うぞ、聞くんだ。チャンスは今しかないんだ。ここを逃したらもう
「・・・何を抱えてるんだ、早貴」
目を一瞬丸く見開き、ぱちぱちと瞬きして俺を見つめる早貴。
何を言ってるのか伝わらなかったか、と思ったが、ちゃんと伝わったらしい。
「ん・・・その、あははは。やっぱりお父さんは分かってたか、さすがだね」
「悩んでるのは分かったよ。でも具体的には分からなかったから」
「私ね、変、なの。学校でね、お父さんの事考えるとね、すごく、したくなっちゃうの・・・」
思ったよりも早貴はすんなり悩みを打ち明けてくれた。
正直言って想像してたよりも重いものだったが、聞くのをやめちゃいけない。
胸の内を明かしたということは即ち、父親を頼っているという事だから・・・
「ほ、ほんとはね、いけないって分かってるの。でもね、止まらないの、ぐす、えぐ」
涙を瞳に溜めている早貴を抱きしめてやった。
いい、もういいんだ、今までよく我慢できたな。もう大丈夫だぞ早貴。
「どうしたらいいのぉ・・・おとぉさぁあん」
堰を切った様に泣き出してしまう早貴。
俺ができることは果たしてなんだ?考えろ、考えるんだ。
自分を抑えられない娘の為に父親がしてやれる事は何だ?