『溺れる魚』-7
第七章〜覚悟の賭〜
最近、グループ内が変だ。桂は私を避けているみたいだし、京と敬、敬と恵も何かよそよそしい。
かくいう私も、恵には頭にきている。夜更けから明け方まで、京と二人っきりで部屋で何をしているというのか。
恵に詰問したけれど、鼻先であしらわれた。馬鹿にされている気がしなくもない。
何で今まで友達だと思ってきたんだろう?
自分でも不思議でならない。
京が恵を好きらしいのは気付いていた。でも恵は
『別に京のこと特別好きな訳じゃない』
なんて言うのだ。
京のどこが不満だと言うのだろう、あんなにかっこよくて優しい人はいないのに…
二人がくっつくことを望んでいる訳でもないのに矛盾していると自分でも思うけれど…
逆に考えれば私が付け入る余地はまだまだあるということなのだ。
蛍はある計画を今夜実行することを考えていた。
絶対、京を私のものにしてみせる!
人形のような端正な容姿に熱い決意を秘めて、蛍は夜を待った。
夜の風は冷たさを増していた。ファー付きのロングコートを着込んでもまだ寒い。
蛍が京の部屋のあるアパートに着くと、ちょうど京が出掛けるところだった。
『京、どこに行くの?』
蛍はいきなり、京に言葉をかけた。
『ほ、蛍?!何でここに?』
京は何故か動揺している。
『ねぇ、部屋に入れてよ』
京の質問を無視して更に蛍は言う。
『あ、あぁ』
ただならぬ雰囲気の蛍に圧倒されたのか、京は予定を変更して蛍を部屋に招き入れる。
『京、好きなの』
言いながら蛍はコートのボタンを外していく。
『でも、俺っ!?!』
返事をしようとした京は蛍を見て驚愕した。
蛍のコートの下は純白のレースの下着姿だったのだ。
『京、抱いて…』
自分のプロポーションには自信がある。京の目が血走ってきた。
京の喉奥がごくりと鳴った。
『蛍…いいのか?』
蛍がこくんと頷くと、京は蛍の体を抱き寄せた。冷えきった体が温まっていく。
『ベットに行こうか?』
優しく京が囁いて、蛍は導かれるままベットに横たわった。