唯高帰宅部茜色同好会!(第一章)-10
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「集まってもらって悪いな」
昼休み、食事を終えて六人は集まった。
普段は放課後以外、こうやって全員が集合するのは珍しいことだけに、今回の出来事が茜色にとって大きなものだと感じる。
「それでユーリ、どうするの?」
そう言うマリィの顔を見ると、なぜかほんのり赤い。
「ああ、昨日考えたんだけどさ、ひとつ良い案が思いついたんだ」
その言葉にサキとアイサはびくりと体を揺らした。
…こいつら、昨日なにを話したんだ?
そうしているうちに、ユーリは言った。
「…俺が振られればいいんだよ」
「は?」
「え!?」
「…?」
「はぁ?」
「……」
ユーリの思いがけない言葉に一同は固まってしまう。
「それってどういうことだ?」
「俺さ、学校一人気の須藤先輩に告白することにした。あれだけ美人なら絶対に振られるだろ?」
「ちょっと待て!いろいろおかしい!」
たしかに三年の須藤楓先輩といえば、卒業後はモデル事務所と契約が決まっていると噂もある超がつくほどの美人だが。
それでもユーリならわからないぞ。
いや、絶対付き合えるんじゃ?
「どういうことだよユーリ!俺じゃだめなのかよぉ!」
「キスケうるさい!」
「えー!だってよー!ってなんだよマリィ、顔真っ赤だぞ?」
「うっ…しょうがないじゃない!誰だってそう思うわよ!」
「はい?」
「……どんまい、マリィ」
サキは苦笑いしながらマリィを宥めた。
「もう手紙は須藤先輩の下足箱に入れておいた。放課後告白することになってるから部室で待っててくれ」
「ユーリ、行動早い…」
「ユーリは天然だったんだね」
サキが微笑みながら言った。
「いやお前が言うな」
そこでふと閃いた。
「ユーリ、その手紙って差出人の名前は書いたのか?」
「いや、書かないほうが振られやすいと思って書いてない」
「…そういう問題じゃねーような気がするぜ」
キスケの言うことが珍しく当たっている気がした。
「……そうか、じゃあ放課後、みんなで部室で待ってるから。期待してる」
「ああ、告白なんてしたことないから楽しみだよ。振られる前提なんだけどな。それじゃあまた後で」
ユーリはそう言って笑うと、飲み物を買うと言って教室を出ていった。
「……」
「……アッキュ、どうするのよ」
「須藤先輩のことはよく知りませんが、ユーリなら」
「うん、付き合っちゃうかも」
「…冗談じゃねえ。今日はユーリの告白妨害作戦だ!」
「うおお!楽しくなってきやがったぜー!」
こうして俺達は、罰ゲームで告白をすることになったユーリの妨害をして告白を止めるという、意味のわからない且つ無茶苦茶な作戦に出ることになったのだ。