第9話-2
私は・・・・・・
「・・・あ・・・」
まただ。また、あれが来る。
最近なんだかおかしい。お父さんの事を考えただけで、体の奥が疼いてくる。
まるで小さな触手が私の体の中に沢山生えてきて、いけない部分を容赦無く刺激してくるみたいに・・・
我慢しなくちゃいけないと思うと余計に興奮してしまい、仕方なくトイレで、自分をこっそりと慰める。
前はあまり無かったのに最近回数が増えてしまい、いくらやってもすぐにしたくなってしまう。
駄目だ、してもしても止まらないなら、やっちゃいけないんだ。
痒い所を掻く程痒みが悪化するのと同じで、いけない。だから・・・我慢しなきゃ・・・
いつからだろう。私がこんなにおかしくなり始めたのは。
疼く下半身を押さえながら、何とかアパートまで帰ってきた。
でも、そこは逃げ場じゃ無い。お父さんと寄り添う場所で、疼くのが止まるのはおかしい。
(だからって他に行く場所があるの、ねえ)
カバンを無造作に置き、自分の部屋の床に寝転がって、疼きから意識を逸らす為の問いかけを繰り返す。
(嬉しくないの。お父さんと一緒にいられるのに)
私の作ったご飯を食べて、下らない冗談に子供みたいに笑う姿を思い浮かべる。
他に何もいらなかった。お父さんと一緒に過ごせれば、他は何も見えなかった。
・・・お父さんはどう思ってるんだろう。休みの度にキスをせがんでいたのを。
そのギリギリの所で止まっていて、入ってはいけない領域に足を踏み入れた¨あの日¨・・・
キスを求めてた時点で普通の父娘じゃない。頭では分かってたけど、気持ちでは変だとは思えなかった。
だから、入ってはいけない領域というのも、本当は理解できていないのかもしれない・・・
「ただいまー。早貴、いるのか?」
思考の海に頭まで浸かっていた所を急に引き上げられた。お父さん、帰ってきたんだね。
込み上げる嬉しさと同時に、体を焦がす様な強い疼きが襲ってきたけど、気付かないふりをして玄関に駆け寄る。
「鍵はかけなきゃ駄目だろ、泥棒がうろついてるかもしれないんだぞ」
「ご、ごめんね。お帰りなさい!」
「どこに居たんだ。何かあってからじゃ遅いんだぞ」
いつもより少し厳しめの口調だった。昔からあまり怒られた事が無かったので、未だに体が竦んでしまう。
お父さんはあまりお兄ちゃんを構わず、私ばかり可愛がっていた。
それでもちゃんと叱る時は叱る、変に生真面目な一面もあったのだ。
・・・良かった。私達はちゃんとした父娘なんだ。
親なら、子供のした過ちを正そうとしてくれる。そうでしょう?お父さん。
「何笑ってんだ、聞いていたのか、早貴」
「聞いてたよ。ごめん、くしゃみ出そう・・・で・・・」
もう、駄目だ。
喜んだ瞬間、抑えつけていた真っ黒い欲望が私の全身から解き放たれてしまった。
まだ肌は敏感なままで、触られたらくすぐったいはずなのに、私はどうしちゃったの。