第8話-5
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!!」
大きく強く跳ねて、俺と繋がる部分を一層強く締め上げてくる。
早貴が・・・まだ離れたくないって、言ってるみたいだ・・・あ・・・うぁああ・・・
「おな、か・・・あつ・・・いぃ・・・」
お腹をさする早貴の手の上から、そっと手を重ねた。
・・・これが俺の体温なのか。確かに、熱い。いまここに生きている証だ。
「へへ、結局しちゃったみたい、うふふふふっ」
「いいんだ、自分には素直にならなくちゃ」
「はずかしいよぉ・・・こんなカッコでしちゃったんだ、わたし・・・」
「似合ってるぞ。だから、もっと胸を張るんだ。自分で決めたんだろ?」
お互いに相手しか見えない時間が長かった。少し長過ぎたんだ。
しかし、いくらなんでもこんなに強い匂いに気付かないなんて、父娘揃って抜けてるな。
「きゃああ?!やばっ!焦げてるぅ!!」
「うおお?!真っ黒い煙が上がってるぞ!早く換気扇回さなきゃ!」
せっかく作った夕飯が危うく台無しになるところだった。
なんとか食えるので一安心だが、それでも半分近くは焦げていて味が分からなくなっていた。
俺はすっかり気付かなかったが、早貴も行為に夢中でまるで気付かなかったみたいだ。
早貴は事後すぐに普通の部屋着に着替えた。
何で素肌にエプロンだけの姿になったのか聞いてみたら、顔を赤くしながら答えた。
「梅雨でお父さんが憂鬱そうだったから、元気になって欲しかったの」
「うん。方法はともかく、俺は早貴のその気持ち、嬉しいよ。ありがとな」
「や、やめてよ、面と向かって言われるの恥ずかしいから・・・」
俯いてしまったのを見て、これ以上は言うのをやめる事にした。
「・・・られるのって…けっこう、…も……い、かも・・・」
スプーンでカレーを口に運びながら、早貴が何か呟いた気がした。
「何か言ったか?早貴。まだ焦げ臭いか?」
「ん?!あっ、いや、うん、そう。焦げ臭い」
少なくとも、焦げ臭いとは言って無さそうだな。
それに聞かなくても娘の考えは分かりそうだ。
もう、とっくに普通の関係ではない。
普通の父娘ではなく既に¨一線¨を越えた、普通の先にいる父娘なんだ。
「・・・あ、止んでる」
窓の外はいつしか雨が上がっていた。
雨雲が隙間なくしきつめられた鉛色の空は、見ていると何故か眩しかった。
恐らく、太陽の光が地上を照らしているのかもしれない。
例え目には見えなくても・・・そこに在る。
〜続く〜