第1話-2
「くすぐったいよぉ」
肩に触れたらぴくっと強ばらせた。まだお前にとってはこそばゆいかな。
「まだ子供だからな。くすぐったいのは仕方ない」
「子供じゃないもん!」
俺にからかわれてむきになり、さっき隠れて煙草を吸った俺に見せたのと同じ顔になった。
こういうところは昔から変わっていない。やっぱり、早貴はまだまだ子供なんだ。俺の娘だ。
腕を回してお腹の上で手を結び、足で下半身を押さえて包み込んでいる。
「お父さんいつもそう。すぐ子供扱いする・・・」
こつん、と頭で俺の肩を叩き、眉を顰めて見上げる早貴。
・・・鼻にかかる幼い声と共に唇から漏れる生暖かい吐息が、俺の頬を撫で付ける。
そのまましばらく俺を見つめていたが、目を閉じた。
唇を窄めて突き出してくる。そうか、おねだりだな。
いつも抱き締めると決まってしてくる事だ。
早貴の唇をなぞり、ぷにぷにとした感触を確かめてから唇を重ねた。
「・・・ん・・・」
最初は触れるだけのキスをし、微かに目を開けて見つめ合い、再び唇を重ねる。
こんな事、家族で暮らしてた時は出来なかった。今なら堂々と出来る。
・・・一応外に見られない様に気を付けてるから、それほど堂々としている訳では無いが。
「・・・・・・・・・」
早貴は俺の肩に頭を乗せて微かに口元を歪めている。
この顔を見る度、細い体に籠もる熱を感じる度に、胸の奥がどうしようもなく熱くなった。
もしかして、俺と暮らす事を選んだのはこういう行為をしたいからじゃないのか?
「お腹空いたね。ご飯にしよっか」
ぽん、と俺の膝を叩いて腕を解く様に促し、いそいそと立ち上がりエプロンを着けた。
・・・また聞けなかったか。早貴の本音。
「♪〜〜〜♪〜」
鼻歌を歌いながらフライパンをふるう後ろ姿は、子供みたいだった。
・・・さっき見せた表情と今の雰囲気が頭の中でシンクロしない。
二年も二人きりで生活してるがさっきの行為¨以上¨の事はまだしていない。
いまの行為だってする様になったのはつい2ヵ月前だった。それも俺からじゃなく・・・
悶々とした思いで早貴の体を撫で回す様に見つめていた。
年頃の女の子にしてはやや華奢だったが、それでも俺の目線を釘付けにするには十分だった。
短めの胴体に人よりも長めの足が綺麗だ。
そして間にあるお尻。胸は正直言うとまだ成長してない感じだが、お尻はそれなりだと思う。
・・・母親の血が入ってるんだ。胸もこれからだよ。きっと
「出来たよ!」
皿に盛られ、湯気と匂いを昇らせる出来たてのオムライス。
早貴の得意な料理で、何より俺の好物だ。
「いただきます」
「食べてみて。今日は隠し味入れてみたの!」
いったい何の味かと思いながらスプーンで一口運び、咀嚼した。
「・・・・・・」
オムライスが俺の好物で、今噛み潰した物は早貴の好物・・・こ、これは・・・
「美味しいでしょ。私特製みかんオムライス!」
「味はさておき隠れてないだろ、実が見えてるぞ。普通に作ってくれよ」
「味はともかくってことは不味くはないんでしょ?」
「不味い」
口ではこう言ってるが早貴には感謝している。
もともと料理は得意でなく、しようともしない俺にとって早貴がいるのは非常にありがたい。
・・・ずっとこうしていられたらいいな。
「じゃあお昼は自分で食べてね。私知らないから」
むくれている娘に苦笑しながら、俺はこれから何をしようか考えていた。
〜続く〜