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このかけがえのない世界へ
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このかけがえのない世界へ3.序-1

昔。

やや背の高い黒髪の若い眼帯の人とやや背の低い茶髪の眼鏡をかけた少女がある町を訪れた。

真夏の暑いその日、その町の住民たちは中央にある広場に集まっていた。

不思議に思った眼帯の人と少女は広場へ行き、人込みの後ろの方にいる人に一体これは何があるのかと尋ねた。

「これから悲しいことが起こるんだよ。
でも私たちにはどうすることもできない。
ただ見ているだけ。
それが彼を救う唯一の方法だから」

訪ねた中年の女が言った。

しばらくしてその広場の真ん中にある壇上に一人の手錠と縄で拘束された痩せこけた男が出て来た。
彼の後ろには屈強そうな男が2人ほど彼を拘束している縄の先を持って監視していた。
そして拘束された男がゆっくりと上の方に鋭い刃がはめ込まれている木の台に頭をいれた。

それまで騒いでいた野次馬たちは嘘のように静かになり、悲しそうな目で彼を見ている。

そして彼がそのままの状態で決して大きくはないがはっきりした声で言った。


「私はこれまで生きてきた。
一生懸命に生きてきた。

だが、世間は私のしたことを認めてはくれなかった。
だから私は救うのだ。
この悲しく恵まれない世界に住む人々を救うのだ――――――」

そうして彼は語り始めた。


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