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『Scars 上』
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『Scars 上』-16

「さて。どうするか」
手ごわいとはいえ、たった二人。
面白い喧嘩になるとは思えない。
だけど。
舐められっぱなしってのもな。
誰に喧嘩売ったのか、きっちり教えてやらないと。
特にあの女。
なぜだろう。
桜の散る中で、見たあの姿。
昨夜、息の掛かりそうなほど間近でみたあの表情。
「……」
それらが目に焼きついて離れないんだ。
「すごいスベスベ」
不意にマツリに頬を撫でられる。
「ちゃんと日焼け止めとか塗らないとダメだよ? こんなにキレイな白い肌なんだから」
間近に迫るマツリの顔。
化粧をばっちりと決めたマツリの顔に、ぼんやりと他の女の影が重なる。
「くそっ」
乱暴にマツリを押しおけながら、頭を振り払う。
――あの眼だ。
「なになに? もしかしてイオリ、今アタシにドキッとしちゃった?」
「うるさいだまれ殺すぞ」
あの女の印象的な強い眼。
何かに抗うような、燃え盛る炎を想起させる眼。
強烈で、美しくて。
「ひどい……」
落ち込むマツリを無視して、扇を握り締める。
やっぱり潰すか。
俺をこんなに惑わせるのなら。
「つうか、イオリよお。昨日の白嶺の娘たちどうしたんだよ?」
やたら、暇そうにしていたユウジがげひた笑みを浮かべる。
俺は、そんなユウジの問いには答えず、ただ扇を弄んだ。
「え、何? なんでそんなことイオリに聞くの?」
取り乱すマツリに、レイが答える。
「昨日、女の子達を追って行ったんだよ、コイツ」
「ええええ! どういうことイオリ?」
「飢えてたんだよな、イオリ? 昨日の女の子達の中に、ケタ外れにかわいい娘いたもんな」
「そんな! 飢えてるんなら、いつだってアタシが相手してあげるのに!」
俺を揶揄するようにニヤニヤと笑うレイとユウジに、まとわりついてくるマツリ。
俺は、そんな三人を無視して空を見上げた。
雲ひとつない青空だった。
「会いに行くか。昨日の女に」
ぼそりと漏れた俺の呟き。
「絶対、許さないんだから!」
悲鳴をあげるマツリを尻目に、他の二人は驚きの表情を浮かべている。
「マジなのか、イオリ?」
驚きのあまり、壁から背を離して言うレイ。
「ああ」
そうだ。
あの女にもう一度会おう。シバにも。
……兵隊を沢山連れてな。


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