好きなアイツは会長さん!〜金峰学園生徒会議事録1〜-1
四月の議事〜駄弁る生徒会〜
「あ、はやた、今日は早いんだね。」
アイツの声を聞いたとたん、俺の肩から、力がすっと抜けていった。
「あのなぁ、俺のこと『はやた』って呼ぶなって、何っ回も言っただろ?」
「うん。でもさ、いいじゃん。呼び捨てにしたらカレカノみたいだし。あたしは、『高峰颯』は
『はやた』って呼ばないと、しっくりこないんだから。」
…。 嘆息。なんだ、なんだこいつ。可愛すぎる。…
あ。自己紹介が遅れた。忘れてた。俺の名前は、高峰颯。金峰学園高等部2年生。
「颯爽」の「颯」を「はやて」と読んで、「たかみねはやて」、だ。
で、今俺がいるのは、生徒会会議室。
俺はこの学校の生徒会の副会長なのだ。ここにいても違和感は無いはずだ。
で、今、俺の隣に座ってるのが、この学校の生徒会長の片瀬小春(かたせこはる)。俺と同じく、高等部2年生。文芸部に所属。サラサラの黒髪をいつもポニーテールにまとめている、俺の幼馴染。でもあり―
―俺の初恋の相手。
俺と小春は家が近所だったこともあり、出会ってすぐに打ち解けた。
保育園は同じだったし、初等部、中等部、高等部が一貫になったこの学園は二人で受験した。
見事受かってからは、クラス替えの度に同じクラスになった。―単なる偶然だけで起こることじゃないぞ。
小春の事が気になり始めたのは、確か中2くらいのころ。クラス替えのとき、小春が
「また同じクラスじゃん!これって何だろ…。 腐れ縁、とかじゃなくて、なんかこう、運命みたいな…ね?」
といったことがきっかけになっている。
あれからずっと小春のことが頭から離れなくなり、ついには悟った。
―「それ」の名前は、『予感』って言うんだ、と。 「それ」は、「初恋」なんだと。 と、ここで。
「どうしたの?さっきから、ボーっとしてるけど。風邪でもひいたんじゃないの?…顔赤いし。」
小春が俺の額に手を当ててくるもんだから、物凄く顔がカッと熱くなった。
「あれ?熱、無いみたいだね。…じゃぁ、何でまた…」
小春がなんで俺の顔が赤くなってるのか、をかんがえていたとき。
ガラガラ、と戸を開けて、誰かが入ってきた。
「あら、2人きりだったのね。…邪魔しちゃ悪かったかしら?」
不敵に微笑んでいるのは、書記の上谷千秋(かみやちあき)さん。生徒会書記を務める、高等部3年生。顔立ちや容姿の面では小春にも引けをとらない人物なのだが、小春の愛らしさは千秋さんの「それ」をいとも簡単に超越していた。
160センチに届くか届かないかのちんまりとした背丈も、それを補おうとして精一杯背伸びした言動も、何事にも一生懸命な精神も、それらが合わさった可愛らしさからか多数の推薦を受けて、
果ては3年生を差し置いて生徒会長になってしまった、という空回り具合も、全てにおいて可愛らしい。
これらは全て、小春にあって、千秋さんには無い特別なものだ。
で、いきなり千秋さんが一言。「高君、あんまり、ハルちゃんに酷いことしちゃだめよ?」…何を想像してんだ、この人は。「あら、私はてっきり、高君がにえっちぃことでも話していたのかと・・・」
びっくりだ。俺が考えてることを読んだ上で返してきた。…俺より1枚上手だ、この人。
ちなみに「高君」とは俺のことで、「ハルちゃん」とは小春のこと。
高峰→高→高君で、小春→春→ハルちゃん、である。基本的にこの人は同級生は苗字で、下級生は
名前で呼ぶ人だから千秋さんにあだ名で呼ばれると物凄く光栄な気さえしてくるのだが、本人いわく
「別に親密かどうかであだな呼びにしてるのではない」そうである。