光の風〈決意篇〉-17
「永を助けような。」
貴未はマチェリラの手を取り、まるで絆を固めるように振った。思いは同じと互いに確かめられる。
マチェリラは最高の笑顔で貴未に応えた。
その様子を見ていた瑛琳は日向を促す。先に行くかと視線で問いた。しかし日向は首を横に振り、僕は、と遠慮する。
日向の堂々とした対応に、胸の内にある固い決意を感じた瑛琳は微笑んだ。
「あっちで待ってるから。」
そう耳元で囁いたあと、カルサを目指して歩き始めた。
ゆっくりゆっくりと近付いてくる姿に、瑛琳もカルサも慣れていない状況が恥ずかしくて照れ笑いをしてしまった。足音はやがて止み、カルサの目の前で瑛琳は微笑む。
「こうやって向かい合うのは初めて会った時以来じゃないの?」
思い出して瑛琳が口にする。確かにとカルサは笑った。瑛琳はカルサの近くにいる千羅に視線を送り笑いかける。
「カルサ、私の願いはあの子の想いが報われること。」
瑛琳の視線の先をカルサは追った。そこには不意打ちをくらった千羅の顔がある。
「その為には…あんたに幸せになってもらわないといけない。分かる?」
何度も耳にタコが出来るほど千羅から聞かされた言葉を今更言うつもりはなかった。カルサは目を細め、ゆっくりと瞬きをする事で瑛琳に応える。
それは瑛琳の笑顔を生み出す合図にもなった。
「私の目的はカルサ、そして千羅、二人の思いが貫けるようにサポートする事。」
名を呼ぶ相手と確実に目を合わせて瑛琳は宣言をした。
「あんたが私達を信頼してくれているなら、私達の目的はより確かなものになる。どうだい?」
瑛琳が不適に笑った。多分それは、信頼していると千羅に聞かせたかったのかもしれない。今この場で、カルサの口から。
もちろんそれは千羅の為だけではない、自分の為でもあった。決意を新たにした今、これまでの関係を瑛琳は確認したかった。
瑛琳の思いをどこまで理解したのか、カルサは微笑んだ。
「好きとか嫌いとか、そういう感情とは無縁だった。リュナに会うまでは。」
どこにでもいる普通の青年の顔をカルサは見せた。そんな事は初めてで、何も言えずただ驚いて見惚れてしまう。
気付いた事があった。
自分の発言から始まり、仲間となる皆の目的を聞いていく内に頭の中が整理されていった。きっと物事は単純で、自分の感情や欲を折り重ねてしまっているから複雑になってしまっているのだと。
自分に付けられた余計なものを落として、改めて千羅や貴未の言葉を受け入れてみる。それは凄く簡単で、直球なことばかり。
それを理解できない、受け入れられないほど頑なに自分の欲や感情、プライドが鎧を作り上げていた。
もう、鎧は捨てたんでしょう?
瑛琳の笑顔が手を差し伸べてくれている。