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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-18

「未練は残さないようにしないと。」

そう言うとカルサは一歩踏み出し、優しく瑛琳を抱きしめた。

あまりに突然の出来事に瑛琳を始め、千羅も貴未も恥ずかしくて顔を赤くする。

「な、なにっ…!?」

宙に浮いた手を動かしながら瑛琳は慌てた。

「この命、尽きる時まで。」

耳元でカルサが囁く。瑛琳は一気に冷静さを取り戻した。

「運命にあがいて一つでも歯車を壊してみせるから。」

二人の近くまできていた千羅にもおそらく聞こえたのだろう。瑛琳も千羅も同じような反応を示した。

カルサはゆっくりと身体を放し、改めて瑛琳に笑いかける。

「瑛琳、千羅。これまで仕えてくれた事、感謝する。」

カルサの言葉に促されるように、千羅は瑛琳の横に並び、二人は片膝をついて頭を下げた。

「はい。」

二人の返事にカルサもしゃがむ。

「二人を信頼している。唯一無二の仲間だと確信している。何より、オレは二人の事が好きだ。」

カルサの言葉にゆっくりと二人は顔を上げた。

「二人がいたからオレは今まで生き長らえてきた。本当に感謝している。」

暖かくやわらかい感覚が全身に広がっていくのを感じた。瑛琳は惚けた顔をして力なくお尻を地べたに付けて座ってしまう。

「瑛琳!?」

瑛琳の様子にカルサは慌ててた。両手を口元にあて、涙を流し始める。そんな姿の彼女を見るのは初めてだった。

「申し訳…っ。」

謝罪の言葉を口に出来ないほどの高ぶりが涙に反映する。

初めてだった。

カルサが生きている事に正面から感謝したのは初めてだった。

それが嬉しくて、ただ嬉しくて涙が止まらなかった。千羅も俯いたまま口に手を当て、一筋の涙を流す。

「私達は長年、貴方様に仕えて参りました。もちろんこれからも変わりません。」

涙をふいた瑛琳の声が静かに響いた。

「もう仕えるなんて言わなくていい。これからは友人として、仲間として一緒に戦ってほしい。」

切願するカルサの言葉に瑛琳は首を横に振った。

「曖昧な態度をとらない皇子が私達を信頼していると言ってくれました。それは本当に誇り高い事、最高の誉れです。」

瑛琳は腰を上げ、両膝で立った。その時に地面を爪で軽く叩く。気付くか気付かないか分からない合図は千羅に向けられたもの。千羅にしか気付けないものだった。

「皇子には最高の友人、仲間がいます。」

瑛琳は視線を送る事で誰かを諭した。彼女の視線の先には貴未がいる。


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