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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-25

〜〜

 放課後、英助は体育館倉庫にいた。
 今回言い渡された任務は、倉庫内で行方不明になったストップウォッチの捜索。
 話を聞くところによると、多香子が倉庫に置き忘れた日、倉庫内部で原因不明の落盤があったらしく、何処にいったのか分からなくなったらしい。
 当の多香子は職員室にお呼ばれしているため、漠然とした手がかりのみで捜索活動が行われていた。
 遭難した物は全部で五つ。発見に至ったのは現在二つだが、それらもボール籠の下に潜り込んでいたり、バレーのネットに絡まっていたりと、いったい何があったのかと首を傾げたくなるくらい散逸していた。
「……ねぇ、千恵の弱みは?」
 床に這いつくばって棚の下を漁る英助に、美奈は遠慮なく声をかける。
 美奈は手伝うつもりは無いらしく、多端であったマットの上に座ったまま、つまらなそうに同じ質問を繰り返していた。
「ないよ。久住はただ忘れ物を取りに行っただけだし」
「ウ・ソ」
 即座に否定される。彼は平気を装ったし、理由も自然なもの。なのにばれてしまう。
「うそって、つか、そう簡単に弱みなんかみせないよ……と、あった!」
 バトミントンのラケットで探ること数回、ようやく取り出すことが出来た。これで残るは二つ。
「昨日の千恵、なんか変だった。それに英助も」
「俺はいつもどおりだよ? それとも何か変なことあった?」
 落ち着いていればなんの心配も無い。一緒に戻って来た理由は由美に話した通りにする。もしそれも指摘されるようなら、体操着の一件を出せばいい。おそらく彼女が犯人なのだから。
「千恵……」
「がどうかしたの?」
「英助、昨日千恵のこと名前で呼んでた。千恵もそれ気にしてなかった」
「ミーさんだって千恵って呼んでるじゃん」
 苦しいと思いつつも言い訳をする。予想していなかった重箱の隅に、英助は自分の甘さを痛感する。
「年頃の男の子が言うのと、女の子が友達感覚で言うのは違うでしょ? それともそんなことも分からない?」
 ――今だけはそういう関係。
 千恵の言葉が思い出される。つまりはそういう事。疑われるには充分だったわけだ。
「ね、教えてくれたらキスしてあげるよ?」
 艶のある深緑の黒髪をかきあげる。そのうちの一本が、柔らかそうな薄紅色に挟まれる。ゆっくりと「キ・ス」と呟くと、楽しそうな微笑を湛える。
 その仕草は確かに魅力的であり、少し前の彼ならころりと騙されてしまったかもしれない。
「ミーさん、俺は何も喋らないよ」
 隠し果せないと知る英助は、言い訳をやめて黙秘の意思を示す。
「……ふーん、やっぱり何かあったんだ」
「うん。だけど、千恵と約束したから」
「また千恵だって……、妬けちゃうな」
 美奈は立ち上がると、次は何処を探そうかと悩む彼の襟元を掴み、自分の顔の高さにまで引き寄せる。
「な、なんだよ。苦しいってば」
「英助変わったね。なんていうか、凛々しくなったかも……。私のキスのおかげかしら?」
「お姫様のキスで呪いが解けたとでも?」
 性格的には魔女の方がお似合いだが、それは胸にしまっておく。
「まぁいいわ、それじゃね……」
 これ以上の詮索を無意味と判断したらしく、美奈は後ろ手を振りながら出口へと向かう。
 英助は尋問をやり過ごせたことに率直に安堵のため息を漏らすと、今度は美奈の座っていたマットの付近を捜索しだす。
 丸まったマット手をかけると、すぐ近くで電子音がした。広げてみると赤いストップウォッチが健気にも自分の存在を懸命にアピールしていた。
 これで残り一つだが、どうせ見つかった後には掃除をしなければならないと思うと、どっと疲れが出る。
 英助が途方にくれていると、いきなりドアが開き、美奈が険しい表情で入ってきた。


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