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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(美奈子の場合)-9

ムラタの車の中のダッシュボードの隙間にはさんであった二枚の写真… 
ふと写真を手にした美奈子の指先が震えた。美奈子は、とっさに運転するムラタの横顔を見つめ
る。


一枚は、死んだ息子の写真だという…それは両親と写った小学生のときのヒロユキのあの写真だ
った。十五年も前にヒロユキに見せられた同じ写真の中にいる父親はムラタだった。


そして、もう一枚の写真…それは、ヒロユキが自殺したときに握りしめていたという女性の写真
だとムラタは言った。



…自殺した息子が初めて愛し、死ぬ直前まで愛し続けた女性だよ…
 



その女性は、まぎれもなくあのころの美奈子だった…。



フロントガラスにそそがれるムラタの黒い瞳が、一瞬潤んだような気がする。
美奈子の心の中に、込み上げるものが一気に溢れてきた。車を路肩に止めたムラタの胸の中に、
顔を埋める。

閉じた瞼の奥でウミホタルの光が乱舞し、やがて涙となって止めどもなく流れてきた…。


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