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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(美奈子の場合)-3

文化祭の片付けをしたあとの夕方だった。美奈子は初めてヒロユキの部屋で彼とからだを重ねた。
あのとき、十八歳になったばかりのふたりの甘い果実のような体が、蒼い旋律を奏でながらひと
つに溶けあった。

美奈子の恋した心とヒロユキを受け入れた生まれたままの体は、靄に包まれた黎明が少しずつ
澄んでいくように、蕩けるような優しいぬくもりで包まれた気がする。



あのとき喫茶店の写真を眺めながら美奈子は、遠い風の中にひとりぼっちで佇む自分を感じた。
やがて、とらえどころのない切なさが、いつのまにか瞼のうらに涙を運んできた。
過ぎ去った時間だけが、さざなみのように冷たく足元だけを濡らしているようだった。



それから何度となく、その喫茶店に通った。

あのとき、美奈子と同じように喫茶店の片隅の席から、ウミホタルの写真をじっと見つめていた
男がいた。
何度かその喫茶店で顔をあわせるうちに、美奈子は男に誘われた。ムラタと言う名前の男は、
ある私立大学の教授だった。妻がいるという彼は、すでに五十歳半ばを過ぎ、白髪の混じった髪
をしていたが、何よりも端正な顔立ちの中にある憂いを湛えたような瞳が、なにか懐かしい安ら
ぎのようなものを美奈子に与えた。


寂しかったのかもしれない…。


ゆらゆらと海藻のように浮遊する自分の心と体がどうしようもなく寂しかったのだ。
そしてあの夜、美奈子はムラタに抱かれた。ムラタは美奈子の体の隅々まで、その肌を愛おしく
唇で愛撫してくれた。耳朶を噛み、腋の下をくすぐるように舌先でつつき、足の指さえ唇に優し
く含んでくれた。

でも、脚を開いた美奈子の翳りを掻き分け、長い時間の前戯を執拗に行いながらも、彫りの深い
彼のペ○スは、美奈子が求めるほど堅くなることはなかった。まだ柔らかさを含んだ彼のペ○ス
を美奈子は白い腿にはさみ、潤んだ陰唇が虚空を掴むように喘ぎ始めると、そのペ○スを性器の
中に深く導いた。



ムラタに初めて抱かれたあと、美奈子はホテルの小さなバーに誘われた。いつもは飲まないドラ
イマティーニが醒めた体の芯を微かに酔わせてくれた。美奈子の肩に彼が手をまわし、まるでず
っと以前から恋人であるかのように優しく抱きよせられた。


寂しさのためにセックスをした…ただそれだけだと思いたかった。ムラタとそれ以上でもそれ以
下の関係にもなることはない…そう思っていた。
でも、結局ムラタとは、深い沼に堕ちていくように何度となく関係を続けた。


ムラタの男根は、いつもかすかに湿り気を帯びるものの、鈍い光沢を放ったまま海綿のように
どこまでも柔らかかった。美奈子の口に含んだ肉棒は、まるで実態のない屍のように冷たく、
口の中で虚しく溶け尽きてしまうようだった。
ムラタの粘り気のない水のような精液が、美奈子の口の中から漏れ、首筋から胸の谷間に流れた。


とらえどころのないセックスをムラタと続けた。でも、ムラタとからだを重ねたあと、帰宅した
マンションのベッドでひとり見る夢があった。


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