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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(美奈子の場合)-2

二十歳のときにヒロユキと別れた…。

美奈子は、ヒロユキが住む瀬戸内海の小さな町から離れた。叔父の紹介で就職した東京の中堅の
電気メーカーで経理事務をずっと続けていた。原色の光が溢れた都会の夜に誘われた男もいたし、
セックスもした。ただ、その心の中に深く飛び込んでいくほど好きになった男はいなかった。


引きずっていた…いつまでも、ヒロユキの瞳から逃れられない自分がいたような気がする。
おそらく、ヒロユキが撮ったあのウミホタルの写真を見たときから、そうだったのかもしれない。

だから、ヒロユキから逃れたかった。別れたあと、ヒロユキから届く何通もの手紙も封を切るこ
となく捨ててしまった。いつ頃からか手紙が来ることもなくなった。



何かから逃れるために、夢中でセックスをした。男たちのペ○スを咥え、どろりとした濃厚な精
液を呑み尽くした。でも、陰部の肉襞が削がれるくらい男たちに性器を貪られながらも、美奈子
は、どこかにもうひとりの醒めた自分がいることを感じていた。


そして、いつかしら美奈子は、ヒロユキを忘れてしまった。




七年前…


突然だった… ヒロユキの自殺…。




あれから、もう七年が過ぎたのだ。
丘の上にある高層の賃貸マンションの窓からは、もうすぐ春がくることを告げるような暖かい陽
射しが差し込んでくる。隣の住戸では、いつものおばさんが布団をたたく音がする。日曜日の朝
の遅い朝食だった。

窓からふと空を見上げる。澄んだ青空がなぜか寂寞と拡がっている。美奈子にとっては、どこか
眩しすぎるくらい青い空だった。

いつのまにか三十歳を過ぎ、まわりを見れば会社の同僚たちは次々と結婚し、退職していった。
気がついたら三十五歳という年齢が、美奈子の心の中にすきま風のように寒々と吹き込んでいる。



あれはヒロユキが自殺して、半年たった頃だった…。

マンションの近くの偶然入った新しい喫茶店で、壁に飾ってある懐かしいあの町の近くの海の
写真を見た。いくつかの青い海を撮った写真の中に、微生物が淡く青白い光を放っている写真が
あった。どこまでも深い静寂に包まれた闇のような海の中で、散りばめられた優しい光を放って
いるのはウミホタルだった。


ヒロユキが撮ったウミホタルの写真を見たのは、高校の時の最後の文化祭だ。

暗闇に包まれた水槽の中に浮遊するウミホタルをとらえた写真だった。あのころ写真部だった
ヒロユキの自慢の写真…それは、どこか不思議な光を漂わせながら、美奈子のまだ閉じられた
蒼い性器の秘襞を初めて潤ませたような気がする。


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