寒い夜の拾い物…最終章-4
「そういえば離婚届けってもう出したの?」
「まだ、来週出す予定なの、向こうと話し合いはもう終わってるけど荷物とか整理して私の実家に送って、全部済んでから、それからね」
「ふぅん、あっ、祐美ちゃんは?祐美ちゃんどうするの?」
「勿論祐美は私が連れてくよ、祐美にとっても私の方がいいし」
「そうなんだ、あぁ、良かったぁ」
「…えっ?何で健司君が良かったなの?」
「…いやっ、あの…、祐美ちゃん、美樹さんになついてたから…、美樹さんと一緒で良かったなぁって、…あははは」
「そうだね、…でも健司君、何で焦ってるの?」
「えっ?ヤダなぁ、別に焦ってないですよ」
「本当に?もしかして健司君、私が引き取れば私を通じて祐美と会えるから良かったって思ったんじゃないの?きゃっ、健司君たら本物のロリコンだったのね、危なぁい」
「あれぇ、バレちゃった、最近美樹さんより祐美ちゃんの方が可愛く見えるからなぁ」
「ひどい、私より若い子が好きなのね、私もう立ち直れないっ」
「あはははっ」
「うふふふ」
そんな事を話していると完全にいつもの明るい美樹に戻って、健司はホッとした。
「あれっ、もうこんな時間、私そろそろ帰らなくちゃ、祐美も待ってるし、ごめんね健司君、今日はエッチ無しね」
美樹は時計を見てそう言うと
「分かってますよ、今日は落ち着いて話す為にここに来たんだし…」
と健司は笑いながら言った。
すると美樹は妖しい顔で
「あら、いいの?健司君が駄々こねたら代わりにパンティあげようと思ったのに…」
と言って帰ろうとした。
健司は慌てて
「ちょっと待って、美樹さん、欲しいです、ください」
と言うと美樹は嬉しそうに
「もう、変態ね、そんなに必死になって、…じゃあ、はい」
と下着を脱ぎ、健司に渡した。
そして突然、真面目な顔をして
「あと…、今度会うのは来週、離婚届けを出した後にしよう、ねっ」
と言った。
健司が
「えっ?別にいいけど…何で?」
と聞くと
「うん、何となくなんだけど、今度会う時はバツイチだけど独身になって、きちんと健司君に会いたいなって…」
と少し照れたように答えた。
何故か健司まで照れてしまい
「…はい、じゃあ、そうしましょう」
と思わず目をそらしてそう言った。
「じゃあ帰ろうか、健司君、一週間そのパンティで我慢してね」
「はい、この下着の匂いを嗅いで、毎日美樹さんの事を考えてますよ」
「うふふ、でもあんまり一人でしちゃ駄目よ」
そんな事を言いながらホテルを出て美樹と別れた。
しかし美樹と会うまでの一週間、健司はずっと悩んでいた。
(美樹さん、離婚してからきちんと会おうって事は、俺と本気で付き合ってくれるって事だよな、…でも俺、美樹さんに沢山秘密がある…、酔ってる美樹さんをやっちゃった事、祐美ちゃんが俺の子供かもしれない事、…今までは美樹さん結婚してたからお互い秘密の関係だからって、なんか気楽に考えていたけど…)
そう考え、さらに
(でも、…もし全部打ち明けたら、美樹さん怒るだろうなぁ、怒るだけならいいけどもう二度と会わないって言われたら…それに姉ちゃんに言われたら殺されそうだな…いやっ、姉ちゃんなんてどうでもいいや、…それより美樹さんと会えなくなるのは…絶対に嫌だ、でも…)
いくら考えてもどうすればいいか全く決まらず、仕事をしていても家にいても美樹の事が頭から離れなかった。
(美樹さん、俺の事本気で考えてくれてるのに、このまま何も言わずに罪悪感を感じながら付き合っていくか、…それとも覚悟を決めて、会えなくなるかもしれないけど全部話すか、二つに一つか…)
そして一週間が経ち、美樹と会う約束の日が来た。