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ミス・イケメン
【純愛 恋愛小説】

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ミス・イケメン-5

あれから後日…。

「十和さん。アルバム!」
「ありがとね。あと、これだったかな?」
「さんきゅー♪」

俺らはCDのアルバム交換をしていた。アドレスも番号も教えてもらったし、ちゃんと目も合わせてくれるようになった。
んで、数学の時間わかんないから聞くと教えてくれるし。それ以外の授業は十和さんがハゲの先生とかおもしろい絵を描いてくれる。(たまに違うのも…;
嘘みてぇに楽しい!はぁ、マジ幸せ…w
そして、人にやたら干渉する気も、突っ掛かって不愉快にさせる気も自然に失せてきた。我ながら調子こいてたなぁとちょっと後悔してる。
この気持ちを伝えたくなる。けど、伝えるのはまだ後。

「いらっしゃいませー。」
学校帰り、俺は通い慣れた美容室に入って受付に向かう。美容室の中は俺とスタッフだけ。
「杉田さん。今日はどのように?」
「今日は―」
この日、俺は調子込みの自分から断念した。切り落とされた髪がやけに長めに見えた。

一ヶ月後、夏休み間近になった。また十和さんを待ち構えて一緒の電車に乗っていた。

「暑〜っ。扇子外せない。」
「この頭にしたら余計に熱い…。;」

実はあの日、俺は前の自分とは縁切って丸刈り頭にしたんだ。十和さんにはもちろん毒をいっぱいくらった。周りには笑われたり驚かれた。
だけど、この頭にしてからというもののしばらく清々しさが抜けなかった。心のどこかではわけのわからん叫びを出して、それを隠すために更に付け上がってみたりして。十和さんと初めて電車に乗った時、別れ際に言ってたことが分かってきたかもしれない。
意外にも友人関係にヒビが入るどころか、一旦省かれたから環境が変わって逆に清々した。前の俺をまだ引きずられてるかもしれないけど、それでも今の自分を止める気はない。
俺が彼女を好きだということはわりと知られてるようだ。彼女はこの気持ちに気付いているのか…?

「失恋した時のほっぺの熱よかマシじゃないの?」
「ずこーっ!変な設定つくんなよ。大体俺がこの頭にしたのにはワケがあって…。」
「…ふーん。」

…あれ?更につついて来ない。いつもならこの辺で死語がでてくるんだけど。

「変わりたかったの?」

予想外の言葉だった。だけど、彼女になら話してもいいと思えた。奥底にある本音を交えて。

「十和さんのことだからさ、キモいとか言うかもしんねぇ。けど、俺にしちゃあでかいことなんだ。」
「保証はしないけど言ってみてよ。」
「俺、十和さんのこと見てて思ったんだ。俺ぜってー調子込み過ぎだって。いきなりかなり後悔したっつーか、まぁ。」

上手く言えないながらも必死で言葉を探す。あー、俺理屈って苦手。

「んでさ、あの時電車で言ってたこと覚えてる?」
「初めて一緒に帰らされた日のこと?」
「そう。あん時さ、話してた時の俺は嫌いじゃないんだなって思って。十和さんの嫌いな俺を直せば、もっと振り向いてくれたんかなってさ。」

十和さんはもしや感づいてるかもしれない。だけど、伝えたくてたまんねぇ。
断られても、毒を吐かれようがいい。俺の大切にしてきた、掛け替えのないもの。
俺は息を吸って、彼女お得意の鋭利な目を真似るようにして言った。

「かなり前から好きなんだ。十和さん。」


〜Fin


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