泥酔白雪=!!??-2
2 「二番、高坂独、歌います!!」
なぜかあったカラオケマシンのマイクを片手に独が歌い始める。
白雪の話しでは、カラオケマシンは春休み、白雪のお母さんが帰って来た時に暇だからと買ったものらしい。話しを聞くだけでも豪快な人だと解るな。
盛り上がりは最高潮……、料理は半分はなくなった。
それにしても、唐揚げとかポテトを食べるとご飯が欲しくなるな……。
そう思いながら、唐揚げを口に放り込む。
「憲、ど…どうだ?」
少しドキドキしたような顔で白雪が聞いてくる。唐揚げはどうやら白雪が作ったらしい。
「ちょっと辛いけど、美味いよ」
自信持てばいいのになぁ。僅か二週間ほどでここまで上手くなるとは……。卵を吹っ飛ばした事が昨日のようなのに。
料理の才能は間違いなくある。
「よ、良かったぁ」
「しかし、唐揚げとか食べるとさ。ご飯が欲しくなるのは、俺だけかな」
そう言うと、白雪が立ち上がってキッチンに消えた。
「……?」
首を傾げているうちに白雪が戻ってくる。手には………茶碗と箸。
「ほら!」
「あ、ありがと」
よ、用意が良い。焚いてたのな。
「あっ…白雪、すごい!」
突然、白雪の横に座っていた八木がそう言った。その声に、他のみんなもこっちを見る。
「何が?」
「実はねぇ」
「あ、愛里!」
口を塞ごうとする白雪の手をかわして、八木が話し始めた。
「白雪が料理を準備してる時に、ご飯焚こうとしてたから、なんでって聞いたの」
ふんふん、とみんなが頷く。こういう時も息が合うよな、うちのクラスは。
「白雪ったら、『絶対、憲はご飯が欲しくなるから焚いとくんだ』って。見事、大当たり!!」
白雪の顔は真っ赤。俺以外の人間の顔はにんまり……。
「ふ、ふんっ!別に良いだろ!!アタシは憲の彼女なんだから!!」
白雪はそう言って、目の前にあったオレンジの絵がプリントされた缶に手を出した。
俺はと言うと……。
あぁ、ご飯がおいしい……。
「よぉし、憲。歌えぃ!!」
現実逃避してると、独がマイクを押し付けてきた。
「な、何でだ!?」
「恵まれとる貴様には罰ゲームだぁ!!採点システムで80点以下なら、ビール……イッキ飲みな」
はが……。イッキ飲みなんてしたら、絶対死ぬ。流石に一口で撃沈って事はないだろうが、やはり弱いもの弱い。
「嫌だ!!」
「駄目だ!!!貴様も少しは不幸を味わえぃ!」
独がそう言うと、みんなが頷く。
………。ええぃ!!腹くくってやる!!
十八番の曲のナンバーを機械に叩き込んでマイクを持つと、イントロが流れ始める。
『…ゆっくりでいいから……君がホントに笑って泣ける様な二人になる…』
ビールの刑になってたまるかとばかりに熱唱してやる。フフン、俺はこの曲で97点取った事があるからな。
『……手を繋いで……君がホントに笑って泣ける様な地図にもない場所へ……』
……どうだ!!歌ってやったぞ、この野郎!!!
得点は……、83点!!
「よっしゃあ!!」
セーフ!!
「……ちっ」
「ちっ、ってなんだ?ちっ、って!?」
独の舌打ちに突っ込む。野郎……。
「まぁ、確かにお前は80点以上取った。しかぁし………飲めぃ、コンチクショー!!」
あぁ!?
独に後ろから羽交い占めにされた。
「独、テメェ!!」
「心配すんな。矢城に介抱して………ん?」
「し…白雪、助けてくれ!」
いつの間にか、白雪が俺たちの前に立っていた。ん…?何か妙に顔が赤くないか?
「ケンにぃ触るなよぉ」
そう言って、白雪が俺から独を引きはがし、腕に抱きついてきた。む、胸が当たる……。
「し、白雪?」
おかしい……、様子がおかしいぞ。
体温も高いみたいで、息が荒い。かと言って、風邪を引いた訳でもないだろう。なんなんだ?
「ケ〜ン〜………キスしてぇ」
「へ………?」
……いきなり、何を言い出すんだ?
ますますおかしい。白雪はこんな事は言わない。いや、言えない。
基本的に恥ずかしがりな白雪が素面で言えるはずが……。
素面……?まさか………。
白雪の息に意識を集中してみる。
……うっ、やっぱり酔ってやがる。
「だ、誰だ!?白雪にビール飲ませたのは!!」
白雪はずっとジュースを飲んでたから、いきなり酒に手を出すのは考えにくい。
ところが、誰も飲ませていないと言うのだ。
ならば一体どうして……。