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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈国王篇〉後編-11

目の前を歩くカルサの背中を見ていた。千羅の拳に力が入る。やりきれない思いを全て糧にして全力で守っていくと強く心に決めた。

「お前、闘志むき出しだぞ?どうしたんだ?」

背後で気合いの入っている千羅に背中で話しかけた。その声は明るく、まるでからかうような様子に千羅は心のどこかで安心を得る。

「宣戦布告ですよ。私が相手になるという、ね。」

「誰に。」

「さぁ?」

本当に過保護だなと笑いカルサは少し満たされた顔で前を向いた。とりあえずは大丈夫、千羅は確信を得る。それだけで強くなれる気がした。

「死ぬつもりはないが、生きているかぎり抵抗しまくってやる。」

自分にも聞こえないほど小さな声で意気込んだ。あの襲撃で痛い程感じた実力の差は生半可なものではない。あの時千羅に出来た事はカルサの盾になるだけ、直接対決して命の危うさを意識せずにはいられなくなった。

だったら、持てる力全てを使って抵抗してやろうじゃないか。何もしないよりは無限に可能性が生まれる、この世には奇蹟という希望がある。

ウ゛ィアルアイの目的の1つ、憶測ではあるが白に近い可能性がある。もしそれが本当なら、彼の中で渦巻いている怨恨の深さに恐怖で身震いがした。太古からの因縁はそんなに浅いものではない。

世界を終わらす程の人の思いの強さに自分の無力さを感じた。長い長い時を経ても薄れることのない憎しみは、同じ時間をかけてカルサを苦しめる。遠回しな攻撃、真綿で首を絞めるような戦略に相手の真意が掴めなかった。でもそれが繋がる。

全てはカルサを邪竜にしようとしたのだったら。

精神的に狂わせ、守る事を忘れ目に入るもの全てを崩壊させる邪竜に、もしなってしまったら。

それだけは絶対に避けなくてはいけない、全力で阻止するのだ。焦りと気持ちが強まる。





ーコンコン

「ハワード様、会議の時間でございます。」

話を終わらせる合図が部屋に響いた。貴未とハワードを包む空気も変わりつつある。

「全て、本当の話だな?」

ハワードの問いに貴未は頷いた。

「それが真実です。」

長いため息は心中の複雑さを物語っていた。足元に落とした視線は決して視界を鮮やかにはしていない。頭の中でぐるぐると巡る貴未の話に困惑していた。

「信じる事は決して容易くはない。」

貴未は静かに頷く。

「しかし、現状がそうなのだとしたら。…あまりの重圧に言葉もない。」

感情が高ぶり、言葉が詰まりそうになった。目は潤んで声は震えている。その姿が何故か貴未には嬉しく思えた。


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